講演情報

[P-133]上顎犬歯欠損に接着カンチレバー装置を用いて正常な口腔機能を維持した審美症例

*長嶺 憲作1、大川 友成2、高藤 雅2、Kern Matthias2、寺尾 陽一2、森 圭右2、中村 健太郎2 (1. 東北・北海道支部、2. 東海支部)
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【緒言】
 近年,日本でも接着カンチレバー装置を適用した症例が散見されるようになったが,犬歯欠損に適用した症例はほとんど見当たらない1).その事由の一つに犬歯誘導咬合は側方滑走運動に不可欠とされ,技術的合併症を招きかねないという考えに基づいている.しかしながら,犬歯誘導咬合が全ての健常有歯顎者に備わっているとは限らない2).一方で犬歯誘導咬合を有さずとも口腔機能を正常に営んでいる患者も多く認められる.
 本症例では,正常に営まれている口腔機能を維持させながらも審美回復を施した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は15歳の女性.主訴は⎿C晩期残存による審美障害である.各術前検査により口腔機能の低下はいっさい認められなかった.また,側方滑走運動時では,⎿4で咬合接触していることが認められた.
 そこで⎿4を支台歯とする接着カンチレバー装置を提案し,患者の同意を得た.口腔機能を阻害しない,かつ左側側方運動に調和した診断用ワックスアップに基づいたイントラオーラルモックアップを試適したところ,患者とその家族から審美回復の了承を得ることができた(図1).
【経過ならびに考察】
 接着カンチレバー装置接着後6ヶ月において,
 1.口腔関連QoL(OHIP-J54:初診時59点→装着後5点)から審美性には高い満足度を示し,口腔機能には影響を及ぼさなかった.
 2.脱離および破折等の技術的合併症は認められない.
 これらのことから,口腔機能障害が認められない上顎犬歯欠損に対し,接着カンチレバー装置は有用であることが示唆された.今後は,さらなる症例検討を行う所存である.
【参考文献】
1) 矢谷博文.オールセラミックカンチレバーブリッジの生存率と合併症:文献レビュー.日補綴会誌 2020;12:209-221.
2) 藍稔,中野雅徳.顎口腔系の形態,機能に関する臨床的調査 第2報咬合について.補綴誌 1975;19(3):75-80.
(発表に際して患者・被験者の同意を得た)