講演情報

[P-134]ブラキシズムを有する症例における接着カンチレバー装置の適用法

*高藤 雅1、長嶺 憲作2、大川 友成1、森 圭右1、中村 健太郎1 (1. 東海支部、2. 東北・北海道支部)
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【緒言】
  接着カンチレバー装置(Resin-Bonded Fixed Dental Prostheses,以下,RBFDPs)の禁忌要件に「ブラキシズムを有する」と記している1).しかしながら,現代の日本人でブラキシズムを惹起しない患者は少ない.また,明確な咬合小面を有する患者においても,現時点でその咬合小面に則ったブラキシズムを惹起しているとは限らない2). そこで,われわれはRBFDPsの適用と設計を診断する目的で,睡眠時ブラキシズム検査(以下,SBT)を用い,現時点でのブラキシズムが歯列咬合面に及ぼす影響を観察するため検討している.歯科技工の観点から,咬合小面の観察精度を高めるため,適合精度が高く,密着性に優れ,患者の着脱に支障をきたさないSBTの作製が求められる.
本症例では,RBFDPsの設計に際し,担当歯科医師と協議を重ねて完成させたSBTの作製法について報告する.
【症例の概要・技工内容】
 患者は15歳女性.主訴は⎿3の萌出異常による審美障害である.⎿4を支台歯とするRBFDPsを提案し,患者の同意を得た.RBFDPsの設計に際して現在のブラキシズムの有無とその咬合接触部位の観察(ブラックスチェッカー,SCHEU Dental)を明確にすることを目的に,適合精度を加味し,密着性に優れる加圧と吸引を可能とする軟化圧接成型器(デュアルフォーマーⅡ,大榮歯科産業)を用いた.SBTの外形はブラキシズムによる脱離予防の形態とした.
【経過ならびに考察】
 意図したSBTにより咬合接触部位が明確に可視化され,設計に反映できたことからRBFDPsの適用が可能となった(図1).RBFDPs接着6ヶ月後,脱離および破折は認められない.
従来の吸引方式成型器ではSBTの密着度が乏しく,適合精度に難を示さざるを得ない.また,印象採得や作業用模型の精度,さらに成型器の温度管理といった要因も強く影響していると考えている.適合性に優れたSBTを観察することで,RBFDPsの適用診断が明確になることが示唆された.
【参考文献】
1) 日本補綴歯科学会.接着カンチレバー装置の基本的な考え方.2024.
2) 日比英晴.天然歯列咬合小面の傾斜角および面積に関する研究.口病誌1991;58(1):138-154.
(発表に際して患者・被験者の同意を得た)