講演情報
[P-136]咀嚼時での水平的顎間関係の決定に治療用義歯を応用した無歯顎症例
*大澤 勇人1、大津 智宏1、山本 司将2、中村 健太郎2 (1. 東京支部、2. 東海支部)
【緒言】
無歯顎補綴治療の顎間記録において,通法の咬合床による水平的顎間関係の決定に苦慮することが多い.それゆえに,セントラルベアリングトレーシングデバイス(以下CBTDと略す)を上下顎咬合床に装着し,習慣性開閉口運動終末位を指標にセントラルベアリングポイントを観察し,評価することで決定している.
しかしながら,患者によっては新たな咬合床に加え,CBTDの存在が舌や口蓋に違和感を与え,口腔感覚の狂いからセントラルベアリングポイントにバラツキを認めることがある.このとき,水平的顎間記録に際して口腔感覚を妨げないことを目的に臼歯部人工歯部にCBTDを応用した治療用義歯を適用することがある.
今回,セントラルベアリングポイントにバラツキを認め,治療用義歯を用いて水平的顎間関係を決定した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は80歳女性.主訴は義歯新製である.現義歯は装着15年以上経過し人工歯の咬耗が著しい.総合難易度評価はO₃S₃Q₁Y₀のCTD4である.
形態的ならびに機能的根拠に基づく方法によって最適な垂直的顎間関係を決定した治療用義歯を作製した.治療用義歯にはCBTD機構(上顎臼歯部:リンガライズド人工歯,下顎臼歯部:レジンフラットテーブル)を搭載した1).患者はCBTD機構を搭載した治療用義歯ではいっさいの違和感を訴えることはなかった.また,この機構により習慣性開閉口運動に限らず,咀嚼運動の終末位も観察することができ,咀嚼機能時の評価も可能となった.最終義歯は垂直的顎間関係を決定した治療用義歯を用いて印象採得,その後は通法に従い完成させた.装着時に咬合調整を含む義歯調整は必要としなかった.
【経過ならびに考察】
装着後も咬合調整を必要とせず,義歯の不具合はいっさい認められなかった.また,有床義歯に関連する検査から良好な結果が得られた.
これらのことから,精度が高く,かつ咀嚼時の評価が求められる水平的顎間記録において,口腔感覚を阻害しない治療用義歯の適用は有効であることが示唆された.
【参考文献】
1) 森 圭右,高藤 雅,中村健太郎ほか.セントラルベアリングトレーシングデバイス機構を付与した治療用義歯による無歯顎症例.日補綴会誌 2022;14:66.
(発表に際して患者の同意を得た)
無歯顎補綴治療の顎間記録において,通法の咬合床による水平的顎間関係の決定に苦慮することが多い.それゆえに,セントラルベアリングトレーシングデバイス(以下CBTDと略す)を上下顎咬合床に装着し,習慣性開閉口運動終末位を指標にセントラルベアリングポイントを観察し,評価することで決定している.
しかしながら,患者によっては新たな咬合床に加え,CBTDの存在が舌や口蓋に違和感を与え,口腔感覚の狂いからセントラルベアリングポイントにバラツキを認めることがある.このとき,水平的顎間記録に際して口腔感覚を妨げないことを目的に臼歯部人工歯部にCBTDを応用した治療用義歯を適用することがある.
今回,セントラルベアリングポイントにバラツキを認め,治療用義歯を用いて水平的顎間関係を決定した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は80歳女性.主訴は義歯新製である.現義歯は装着15年以上経過し人工歯の咬耗が著しい.総合難易度評価はO₃S₃Q₁Y₀のCTD4である.
形態的ならびに機能的根拠に基づく方法によって最適な垂直的顎間関係を決定した治療用義歯を作製した.治療用義歯にはCBTD機構(上顎臼歯部:リンガライズド人工歯,下顎臼歯部:レジンフラットテーブル)を搭載した1).患者はCBTD機構を搭載した治療用義歯ではいっさいの違和感を訴えることはなかった.また,この機構により習慣性開閉口運動に限らず,咀嚼運動の終末位も観察することができ,咀嚼機能時の評価も可能となった.最終義歯は垂直的顎間関係を決定した治療用義歯を用いて印象採得,その後は通法に従い完成させた.装着時に咬合調整を含む義歯調整は必要としなかった.
【経過ならびに考察】
装着後も咬合調整を必要とせず,義歯の不具合はいっさい認められなかった.また,有床義歯に関連する検査から良好な結果が得られた.
これらのことから,精度が高く,かつ咀嚼時の評価が求められる水平的顎間記録において,口腔感覚を阻害しない治療用義歯の適用は有効であることが示唆された.
【参考文献】
1) 森 圭右,高藤 雅,中村健太郎ほか.セントラルベアリングトレーシングデバイス機構を付与した治療用義歯による無歯顎症例.日補綴会誌 2022;14:66.
(発表に際して患者の同意を得た)