講演情報

[P-138]新しい咬合概念に基づいた全顎再構築の症例報告

*田中 俊樹1、尾澤 暢彦2 (1. 西関東支部、2. 東関東支部)
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【諸言】
新しい咬合概念「中心域内機能的調和咬合(Functional Balanced Occlusion within Centric Space.以下:CSO)」は, 咬合に関する不明瞭な用語の定義に概念数値を用いそれぞれの位置を想定し,有歯顎再構築治療に応用している. 中心位(CR):上下顎,左右顎関節及び周辺筋肉の最も安定した位置.安静位と同義.(安静空隙:概念数値2〜3mm). 中心咬合位(CO):最大咬頭嵌合位(食い縛り時). 中心位咬合位(CRO):習慣的中心咬合位(嚥下時). COとCROの間には,下顎切歯点(P)において概念空間0.025mm3のCentric Spaceと呼ばれる空間がある. CROは,昼の垂直体位から睡眠時の水平横向き体位の変化に伴い,このCentric Spaceの中を移動し生理的嚥下運動を行っている.
【症例の概要・治療内容】
被験者主訴: 義歯装着困難,ブリッジを希望.70才,女性.全身疾患の既往歴,現病歴は無い.骨隆起大.ブラキシズムの疑い. 
前準備処置:インプラント埋入. 歯周疾患の管理等. Dyna Verty System 1)(以下:DVS)にて骨学的に不動性の上顎歯列に基準平面を付与した治療用プロビジョナルブリッジ仮着. 可動性下顎歯列のプロビジョナルブリッジは, DVSの平均的咬合高径にて仮着.被験者の口腔内にてCSO概念に基づいた咬合調整. 咀嚼,嚥下などの日常生活を確認.上下支台歯と上下プロビジョナルブリッジの印象,CRとCOの咬合採得. 石膏模型を技工サイドでスキャニング後3Dプリンターにて出力.ジルコニアセラミックにて審美的演出.最終補綴装置を口腔内にて25ミクロンの咬合紙と術者の手指感覚を用い最終咬合調整後合着.更に,上顎歯列にCSOアプライアンス2)の装着.
【考察】
CSO概念のCROは,Centric Space内を移動し生理的嚥下運動を行う動的と考える.また,ブラキシズムの疑いに対しては,CSOアプライアンスを必須と考える.
被験者の承諾済 .利益相反は無い.
【参考文献】
1) 末次 恒夫, 古谷野 潔.咬合平面測定器具. 歯科技工1988;別冊: 172-173.
2) 田中俊樹. 新しい咬合概念を応用したアプライアンスの効果.顎咬合誌 2025;44:315-323.