講演情報
[P-139]長期安定を実現させるため,咬合位に配慮した一症例
*森田 明子1、森田 憲司1、倉田 豊2,4、鈴木 亜沙子2、永田 俊介3 (1. 東京支部、2. 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座、3. 日本大学松戸歯学部歯科生体材料学講座、4. 東関東支部)
【緒言】
「米国補綴用語集(GPT:Glossary of Prosthodontic Terms)」10th1)は2023年に出版されているが,2017年の9th Edition²)より中心位の定義が改変された.新しい中心位の定義が示され,顎関節円板位置の記載は除かれた.この事を踏まえた上で,矯正治療を望む顎関節内障患者においては,その咬合の長期維持安定を求めるために,その治療ゴール,治療顎位について深慮する必要があると考える.今回,咬合位に配慮しつつ矯正治療を行い,欠損部位に自家歯牙移植3)を行うことで良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
一般歯科初診時年齢51歳女性.#36欠損を伴うⅡ級,叢生症例.左下ブリッジの度重なる脱離と咬み合わせ,左右均等に力が入らないことを主訴に来院.マルチブラケットによる矯正治療と,欠損部位への便宜抜去歯の自家歯牙移植,歯冠修復を選択.
【経過ならびに考察】
本症例では,筋の安静時における下顎位を最終顎位としスタビライゼーションアプライアンスにより顎位を求め,リラクセーションアプライアンスを併用しつつ行ったマルチブラケット装置による矯正治療にて咬合の確立を図った.欠損部位には便宜抜去した#15#25を移植し,暫間修復を施した.患者の口腔顔面筋のバランス改善と生活習慣,パラファンクションへの配慮といった力のコントロール4)を行い,咬合の安定が得られたことを確認後,最終補綴処置へと移行した.本症例では矯正治療前に下顎位を求めたことにより下顎位は前方移動し,転位していた関節円板は整位した5).その後も力のコントロールをしつつ矯正治療を行ったことにより一層,筋のバランスは整い,安定した咬合,咀嚼につながったと思われる.
【参考文献】
1)Glossary of Prosthodontic Terms 10th. 2023.
2)Glossary of Prosthodontic Terms 9th. 2017.
3)下地勲:歯根膜再生による再生治療-インプラントを考える前に-.医歯薬出版, 2009, 17-30.
4)筒井昌秀,筒井照子:包括歯科臨床.クインテッセンス出版,2023; 78-190.
5)矢野圭介,小倉有美子,陳輝,篠原親,柴崎好伸:
関節円板の整復に伴い顎関係の改善がみられた成人上顎前突症. Ortho Wave 2002; 61(2): 88-95.
「米国補綴用語集(GPT:Glossary of Prosthodontic Terms)」10th1)は2023年に出版されているが,2017年の9th Edition²)より中心位の定義が改変された.新しい中心位の定義が示され,顎関節円板位置の記載は除かれた.この事を踏まえた上で,矯正治療を望む顎関節内障患者においては,その咬合の長期維持安定を求めるために,その治療ゴール,治療顎位について深慮する必要があると考える.今回,咬合位に配慮しつつ矯正治療を行い,欠損部位に自家歯牙移植3)を行うことで良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
一般歯科初診時年齢51歳女性.#36欠損を伴うⅡ級,叢生症例.左下ブリッジの度重なる脱離と咬み合わせ,左右均等に力が入らないことを主訴に来院.マルチブラケットによる矯正治療と,欠損部位への便宜抜去歯の自家歯牙移植,歯冠修復を選択.
【経過ならびに考察】
本症例では,筋の安静時における下顎位を最終顎位としスタビライゼーションアプライアンスにより顎位を求め,リラクセーションアプライアンスを併用しつつ行ったマルチブラケット装置による矯正治療にて咬合の確立を図った.欠損部位には便宜抜去した#15#25を移植し,暫間修復を施した.患者の口腔顔面筋のバランス改善と生活習慣,パラファンクションへの配慮といった力のコントロール4)を行い,咬合の安定が得られたことを確認後,最終補綴処置へと移行した.本症例では矯正治療前に下顎位を求めたことにより下顎位は前方移動し,転位していた関節円板は整位した5).その後も力のコントロールをしつつ矯正治療を行ったことにより一層,筋のバランスは整い,安定した咬合,咀嚼につながったと思われる.
【参考文献】
1)Glossary of Prosthodontic Terms 10th. 2023.
2)Glossary of Prosthodontic Terms 9th. 2017.
3)下地勲:歯根膜再生による再生治療-インプラントを考える前に-.医歯薬出版, 2009, 17-30.
4)筒井昌秀,筒井照子:包括歯科臨床.クインテッセンス出版,2023; 78-190.
5)矢野圭介,小倉有美子,陳輝,篠原親,柴崎好伸:
関節円板の整復に伴い顎関係の改善がみられた成人上顎前突症. Ortho Wave 2002; 61(2): 88-95.