講演情報

[P-147]補綴歯科専門医を目指す若手歯科医師による欠損補綴症例 第3報

*沼澤 美詠1、黒米 裕1、義原 皇一郎1、猪山 佑香1、坂本 大輔1、鈴木 未来1、岩田 直樹1、松本 怜央1、中村 優作1、山田 尚樹1、松本 大慶1、岡本 和彦1 (1. 明海大学歯学部機能保存回復学講座有床義歯補綴学分野)
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【緒言】
 本学附属病院歯科補綴科は日本歯科専門医機構認定の補綴歯科専門医認定研修機関であり,若手歯科医師が多く在籍している.今回は専門医を目指す2名の若手認定医の症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 症例1
 患者は91歳の女性で,咀嚼困難を主訴に来院した.口腔内所見は,上下顎無歯顎であり,上顎の顎堤形態はUV中間型,粘膜は硬く厚みは中等度であった.下顎の顎堤高さは左右で異なり,形態はU型であった.現義歯は部分床義歯を修理して使用しており,上顎臼歯部人工歯には金属歯が使用されていたが,下顎臼歯部に硬質レジン歯が用いられていたため著しい咬耗が認められた.以上の検査より,上下顎義歯の咬合不良および維持不良による咀嚼障害と診断し,治療計画として下顎位の保持を目的として上下顎臼歯部に金属歯を用いた全部床義歯の新製を提案し,患者の同意を得た.最終補綴装置には上下顎金属床義歯を装着し,人工歯には咬合面置換型レジン臼歯(ツーピースティース,ジーシー)を選択し,1か月間使用した後に金属歯へ置換した.
 症例2
 患者は76歳男性.下顎部分床義歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.口腔内所見は,残存歯に大きな問題を認めず,歯周基本検査の結果も正常範囲内であった. Eichner分類はB4であるものの,口腔内で前歯部の咬合接触は認められなかった.また,装着中の下顎部分床義歯は,咬合時に垂直的な動揺が触知された.以上より,義歯の安定不良による咀嚼障害と診断し,治療計画として下顎両側臼歯部にインプラントを埋入した後,ISRPDを装着することを提案し,患者の同意を得た.最終補綴装置には上下顎金属床義歯を装着し,下顎義歯の大連結子にはリンガルエプロンを用い、インプラント上部構造には磁性アタッチメント(マグフィットIP‐ST,愛知製鋼)を用いることで,支持・把持・維持を増強し,義歯の安定を図った.
 なお,本発表に際して2症例共に患者の同意を得た.
【経過ならびに考察】
 症例1・2
 グミゼリーによる咀嚼機能検査を用いて咀嚼障害の治療効果を定量化したところ,旧義歯と比較して治療後に改善が認められた.
 補綴歯科専門医を目指す若手歯科医師にとって,適切な検査,診断に基づく補綴歯科治療を行う事は重要である.また,その補綴装置の形態と機能を維持,管理する知識と技能の追求も必要である.今後も指導を続けていきたいと考える.