講演情報

[P-16]繰返し着脱試験がSLMで製作した局部床義歯支台装置とCAD/CAM冠に及ぼす影響

*古川 紗都1、加藤 芳実1、伴野 圭太1、吉田 浩一2、和達 重郎1、武本 真治3、山下 秀一郎1 (1. 東京歯科大学 パーシャルデンチャー補綴学講座、2. 東京支部、3. 岩手医科大学医療工学講座)
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【目的】
 CAD/CAM技術を用いて製作するコンポジットレジンクラウン(CAD/CAM冠)の適用範囲の拡大に伴い,局部床義歯の支台歯として選択される症例が増加している.CAD/CAM冠のレストシート部では金属冠以上に十分な厚みの確保が必要となるが,該当部の支台歯形成量が不足するとレスト基部の破折の原因となる.一方,金属積層造形法(SLM)で製作した支台装置は,破壊靭性に優れるとの報告があるが,レスト基部の強度,繰返し着脱後の維持力やクラウンの形状変化については不明な点が多い.本研究では,CAD/CAM冠に適用可能な義歯支台装置を検討するために,咬合力相当の荷重を負荷した繰返し着脱試験が,SLMで製作した支台装置とCAD/CAM冠に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 支台歯には#45(FDI)を選択した.設計データから,コンポジットレジンブロックを切削加工し,CAD/CAM冠を製作した.これをレジン支台歯に接着性レジンセメントで接着した.製作したクラウンのSTLデータ上で,レスト基部の厚みを0.8mm(0.8mm群)と1.6mm(1.6mm群)とする2種類のレスト付二腕鉤(両側把持腕)を設計し,Co-Cr合金粉末を用いてSLMで製作した(各5個).繰返し着脱試験は,咬合力相当の荷重下で10,000回まで行った.維持力は,万能材料試験機を用いて,試験前後に計測した.形状変化は試験前後のクラウンをスキャニングし,得られたSTLデータから形状差分値を算出した.また,走査電子顕微鏡(SEM)で表面形状を観察した.維持力の分析では,試験前後の比較と2群間の比較を,形状変化の分析では,試験前後の比較を統計学的に行いました.
【結果と考察】
 0.8mm群では,繰返し着脱試験途中において,5個中2個の試料のレスト基部が破折した.残り3個の試験後の維持力は1.55Nであり1.6mm群との間で有意差は認められなかった.形状差分値は,0.8mm群において-0.02mmであった.SEM観察の結果,レストシートには擦過痕が,レスト基部に合金の劈開様の構造が観察された.本実験結果から, SLMで製作した義歯支台装置とCAD/CAM冠との間に摩耗が生じ,維持力は低下することが示唆された.また,SLMで製作した支台装置であっても,レスト基部は0.8mmより厚く設計する必要性が考えられた.