講演情報

[P-160]骨髄異形成症候群の患者にインプラント治療を行って良好な経過を経験した1症例

*窪木 慎野介1、大野 充昭1、土山 雄司1、秋山 謙太郎2、窪木 拓男1 (1. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野、2. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 咬合・有床義歯補綴学分野)
【緒言】
 骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndromes:MDS,ICD10コード:D46)は,造血幹細胞腫瘍であり,病像,病態,および予後は症例毎に多様である.日本では1年間に約6000人が診断されており,罹患率は年齢とともに上昇する.現在に至るまでMDS患者に対するインプラント治療を行ったという報告は極めて少ない.本症例では,1歯臼歯欠損に対してインプラント治療を行なった結果,良好な機能・審美の回復を得たので報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は79歳男性.食事時の25および46の咬合時の違和感を感じていたが,MDSの診断を受けていたため,かかりつけ歯科医院より抜歯とインプラント治療を依頼され,2023年3月に本大学病院歯科・口腔インプラント科部門を受診した.MDS,高血圧症,両側副鼻腔炎等の既往歴があった.MDSと診断した担当医に診療情報提供を依頼したところ,患者の状態はMDSの国際予後評価システムにおいて低リスク・予後良好であり,術後感染に留意すればインプラント治療に支障はないとの意見を受け,インプラント治療を開始した.外科処置を行う際は,必ず術後感染の予防のために抗菌薬を処方した.2023年5月,CT撮影を行い,インプラント埋入計画を立てた.2023年6月に46の抜歯を行い,インプラント体 (BLT RC 10 mm, Straumann, Switzerland)を1本埋入した.埋入4ヶ月後に2次手術を行い,暫間補綴装置を装着した.2023年7月に25の抜歯とリッジプリザベーションを行った.6ヶ月後にインプラント体 (BLT RC 10 mm, Straumann, Switzerland)を埋入し,2024年2月に2次手術,同年4月に暫間補綴装置を装着した.2024年8月に25・46部に最終補綴装置を装着し,経過観察に移行した.
【経過ならびに考察】
 咬合負荷を与えてから46部は15ヶ月,25部は9ヶ月の経過を観察した.口腔内に異常所見は観察されず,デンタルX線写真においても顕著な骨吸収像やインプラント周囲炎等の異常所見も観察されていない.国際予後評価システムで低リスクと診断されたMDSの患者であれば,一次手術閉創後十分な骨結合期間を与え,術後感染に留意すれば,通常通り口腔インプラント治療を行えることが示唆された.(発表に際して患者の同意を得た.)