講演情報

[P-162]全身症状を伴う咬合違和感に,保存療法,咬合への介入で症状改善に至った1症例

島田 百子1、*島田 淳1 (1. 東京支部)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言】
 今回は一般的な歯科治療により全身症状を伴う咬合違和感が生じた症例に対して,保存療法とその後の咬合への介入により症状が改善した症例について報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は44歳,女性,3年前左側臼歯部をう蝕で治療した後,咬合違和感が生じ,他院にて咬合調整を行った,直後より咬合違和感が増加,顎関節症症状と身体の違和感が生じる.その後,高次医療機関を含め数件の歯科医院で,咬合調整,コンポジットレジン(以下CR),治療機器を用いた咬合治療,アプライアンス療法,運動療法を行うが症状が改善しないため来院.現症:自力,強制最大開口量39mm左側に咬筋痛,クレピタス.触診により左側顎関節,咬筋,側頭筋,顎二腹筋後腹,胸鎖乳突筋に圧痛あり,最近1週間の痛み VAS:74/100,QOL:VAS:100/100.画像検査により左右側下顎頭の変形あり,滑走障害あり.SSS-8:18点,舌圧17.4kPa,口唇閉鎖力7.2N. 咬合について大きな問題はないように思われたが,左側顎関節徒手的授動術を行う事により咬合接触は変化し,症状は楽になる.診断:顎関節症,咬合違和感症候群.治療は疾患教育,病態説明後に口腔機能低下の改善を含めたセルフケア指導,顎関節徒手的授動術,アプライアンス療法を行う.3週間後には左側咀嚼筋痛は減少するが,アプライアンスがないと症状が強くなること,咬合へのこだわりが強いことから咬合への介入,症状の増減は激しかったが,患者と相談の上,左側下顎67にプロビショナルレストレーション,FMC製作を仮着した.
【経過ならびに考察】
 FMC仮着後,痛みVAS:14/100,QOL VAS:25/100,SSS-8: 5点, 舌圧31.4pKa,口唇閉鎖力14.8Nと口腔機能も改善し症状は落ち着く.まだ気になることがあるが,症状がもう少し安定してから治療を再開することを説明し現在経過観察中である.咬合違和感に付随する症状に対して,患者の解釈モデルを確認するとともに保存療法のみでなく,咬合を含め多方面より介入することが必要1)ではないかと思われた.
【参考文献】
1) 島田淳. ある日突然やってくる困った患者さん2. 東京: デンタルダイヤモンド社; 2024