講演情報

[P-28]クリームタイプ義歯安定剤の粘度と接合力に及ぼす成分および水混和の影響

*佐藤 純子1、岡﨑 ひとみ1、村田 比呂司1 (1. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科補綴学分野)
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【目的】
 唾液の分泌が低下し,顎堤の吸収が顕著な義歯患者に,義歯の維持安定を補うためクリームタイプ義歯安定剤の使用は有効である1).しかしながら現在,クリームタイプ義歯安定剤の物性と成分との関係について十分明らかにされておらず,持続性や清掃性について理想的な義歯安定剤は開発されていない.本研究では,クリームタイプ義歯安定剤の主成分が粘度と義歯床に対する接合力に及ぼす影響を検討した.
【方法】
 本剤の主成分として,基材であるワセリン(WLP),流動パラフィン(LP)と水溶性高分子であるメトキシエチレン無水マレイン酸(PVM-MA),カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を用いた.成分の組み合わせはL9(34)直交表を用いて決定し(表1),さらに一因子実験も行った.粘度はストレス制御式レオメーター(DISCOVERY HR-2,TA Instruments社製)を使用し,ずり速度0.1~100sec-1で測定し,1sec-1の粘度を算出した.接合力は小型卓上試験機(EZ-TEST,島津製作所製)を用いて,試料の厚みを一定(1mm)とし算出した.材料に水を混和しないものと口腔内を想定し一定量の水を混和したものについて測定した.統計は分散分析を行った.
【結果と考察】
 水を含まない材料では,基材中のワセリンと流動パラフィンの割合が粘度では39.0%,接合力では62.2%の寄与率となり,3因子の中で最も大きく影響した.また,水を含んだ材料では,全成分中における基材と水溶性高分子の割合の変化が粘度に対して56.3%,接合力に対して86.7%の寄与率となり,3因子の中で最も大きく影響した.本研究の結果より,水を含まない材料では基材中のワセリンの割合が上昇すると,粘度と接合力はともに上昇した.また水を含む材料では,とくに全成分中の水溶性高分子の割合が上昇すると,粘度と接合力はともに上昇する傾向にあることが明らかとなった(図1).今後は成分および水分の混和量と物性の持続性に関しても検討が必要である.
【参考文献】
1) Kano H, Kurogi T, Shimizu T et al. Viscosity and adhesion strength of cream-type denture adhesives and mouth moisturizers. Dent Mater J 2012;31(6):960-968.