講演情報

[P-39]上顎歯列モデルの傾斜角度の偏差を指標とした歯列顔面モデルの精確さ

*山崎 光葉1、佐藤 正樹1、糸田 昌平1、津守 佑典1、田中 順子1、柏木 宏介1 (1. 大阪歯科大学 有歯補綴咬合学講座)
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【目的】
 現在国内で入手可能な2種類のフェイススキャナーと,口腔外スキャンボディ,および歯列を含んだ口腔周囲スキャンで統合した3種類の歯列顔面モデルについて,上顎歯列モデルの傾斜角度の偏差を指標として精確さを調査した.
【方法】
 被験者は健常有歯顎者15名とした.高精度光学スキャナー(Go!SCAN SPARK)と口腔内スキャナー(Primescan Connect)を用いて,基準バーチャル患者(RVP)を作成した.研究用スキャナーには歯科用フェイススキャナー(Face Hunter, FH)と3Dスキャンアプリケーション(Heges, HE)をインストールしたスマートフォン(iPhone 12 Pro Max)を用いて,口腔外スキャンボディあるいは口腔内スキャナー(IOS)で取得する歯列を含む口腔周囲スキャンを統合媒体として,3種類の統合方法による研究用バーチャル患者(SVP)を作成した(FH-S,HE-S,HE-P).RVPと3種類のSVPの位置合わせをそれぞれ行った.歯列顔面モデルの精確さの指標として,上顎基準平面に対して平行で,左右側の上顎第一大臼歯の遠心頬側咬頭頂を結ぶ線分を長辺とする長方形を作図して,長辺と短辺が基準平面となす角をy軸回りのroll角,x軸回りのpitch角,z軸回りのyaw 角とし,基準モデル-研究モデル間での偏差角度を算出した.2日,各日3回の6回測定の平均値を各被験者の代表値とした.統計学的解析には反復測定一元配置分散分析を行った(α=0.05).
【結果と考察】
 FH-S,HE-S,HE-Pの上顎歯列基準面の傾斜角度の偏差を指標とした真度の95%信頼区間について,roll角では(0.4 - 0.5 °), (0.6 - 0.8 °),(1.5 - 2.2 °),pitch角では(0.3 - 0.7 °),(0.4 - 0.6 °) ,(1.8 - 2.7 °),yaw 角では(0.3 - 0.4 °),(0.3 - 0.5 °),(1.0 - 1.4 °)であった.歯列の傾斜角度の偏差は,一般人が認識できる視覚閾値の3°以内に収まっているが,HE-Pでは真度の95%信頼区間の下限値が1°以上であり,FH-S,HE-Sより有意に大きい値を示したことから,歯科治療における取り扱いに注意が必要である.