講演情報

[P-52]光照射間隔が接着性レジンセメントの物性および重合収縮応力に与える影響

*渡邊 礼理1、原田 章生1、尾崎 茜1、河阪 幸宏1、江草 宏1 (1. 東北大学大学院分子・再生歯科補綴学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 CAD/CAM製コンポジットレジンクラウンでは,加工の特性上,比較的大きなセメントスペースを要するため,接着性レジンセメント硬化時の重合収縮応力が接着界面剥離の一因となり得る1).本研究では,接着性レジンセメントを硬化させる過程で光照射に間隔を設けることで重合収縮応力を制御できる可能性の探索を目的とした.
【方法】
 実験にはリライエックスユニセム2(RXU:3M)およびジーセムONE EM(GCO:ジーシー)を用い,G light Prima Ⅱ(ジーシー)で光照射した.照射条件は,10秒照射(10s),30秒照射(30s),2秒照射後5分間待機し8秒照射(2s/8s),5秒照射後5分間待機し5秒照射(5s/5s)の4群とした.各条件で照射し,15分後のビッカース硬さおよび重合度を,硬度計およびフーリエ変換赤外分光装置を用いて測定した.また,照射後の各試料の収縮応力について万能試験機を用いて15分間経時的に測定し,最大収縮応力速度を計算した.統計処理は二元配置分散分析を実施後,Tukey-Kramer HSD検定を用いた(有意水準5%).
【結果と考察】
 RXU,GCOいずれにおいても,各照射条件間でビッカース硬さおよび重合度に有意差を認めなかった.重合収縮応力を測定した結果,RXUでは30s群が他群より有意に高い値を示し(P < 0.05),5s/5s群が他群より有意に低い値を示した(P < 0.05).GCOでは各条件間に有意差を認めなかった.最大収縮応力速度を検討した結果,RXU,GCOいずれにおいても,5s/5s群および10s群は30s群より有意に低い値を示した(P < 0.05).以上の結果より,接着性レジンセメントの硬化において,特にRXUは5秒間の光照射後に待機間隔を設け,追加で5秒間照射することで,通法(10秒間連続照射)で得られるビッカース硬さおよび重合度を維持しながら,収縮応力を抑制できる可能性が示唆された.
【参考文献】
1) May LG, Kelly JR, Bottino MA, et al. Effects of cement thickness and bonding on the failure loads of CAD/CAM ceramic crowns: multi-physics FEA modeling and monotonic testing. Dent Mater 2012; 28:e99-109.