講演情報
[P-53]フッ化物溶液に浸漬したチタン銀系合金の表面分析
*武本 真治1、櫻井 直人2、江川 恭徳3、澤田 智史1 (1. 岩手医科大学医療工学講座、2. 岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座歯科矯正学分野、3. 石福金属興業(株))
【目的】
純チタンやチタン合金は,生体親和性に優れることから歯冠補綴装置や歯科用インプラント体として広く応用されている.一方で,そのチタン合金はフッ化物が存在する酸性生理食塩水の環境によって変色および腐食することが知られている.したがって,新規チタン合金を歯冠補綴装置として応用を検討する上では,フッ化物に対する反応性を明らかにすることは重要である.本研究では,新規チタン銀系合金をフッ化物溶液に浸漬し,その表面分析を行い,表面反応を検討した.
【方法】
試料にはTi-Ag合金(TS)およびTi-Ag-Nb-Cu合金(TSNC:いずれも石福金属興業)を選択し、それぞれ円板状試料を切削加工した.試料は通法にしたがって最終的に鏡面にまで研磨した.参考試料として純チタン(TI:Grade 2,東京チタニウム)を棒材から切断し,同様に鏡面研磨した.
溶液は,0.9%NaClに0.1%NaFを含有するフッ化物生理食塩水に少量の乳酸でpH5.0に調製した(NAF).また, 0.9%NaCl溶液をpH5.0に調製し,参考溶液とした(SAL).これらの溶液に試料を37℃で7日間浸漬した(n=3).浸漬前後の試料は走査型電子顕微鏡(SEM:日立ハイテク)およびX線光電子分光分析装置(XPS:Kratos)で調べた.
【結果と考察】
SEM観察の結果,SALに浸漬した試料はいずれも研磨した試料と同等であった.一方で,NAFに浸漬したTSおよびTSNCでは表面に析出物が観察され,TIでは部分的に溶出による粗造な部位が認められた.XPS分析ではSALに浸漬したいずれの試料も合金構成元素が検出され,主にチタンの不動態被膜で覆われていた.一方で,NAFに浸漬したTSおよびTSNCでは,Ti2pスペクトルにTi4+の酸化状態のみ確認され,チタンの酸化が進行していた.また,TSおよびTSNCにおいてはAg3dでは酸化物よりも金属状態の割合が多く,それぞれの合金はフッ化物に対しての酸化反応性は低いと考える.
以上の結果より,フッ化物溶液中に浸漬したチタン銀系合金は酸化するが,反応速度に影響する可能性が示唆された.
純チタンやチタン合金は,生体親和性に優れることから歯冠補綴装置や歯科用インプラント体として広く応用されている.一方で,そのチタン合金はフッ化物が存在する酸性生理食塩水の環境によって変色および腐食することが知られている.したがって,新規チタン合金を歯冠補綴装置として応用を検討する上では,フッ化物に対する反応性を明らかにすることは重要である.本研究では,新規チタン銀系合金をフッ化物溶液に浸漬し,その表面分析を行い,表面反応を検討した.
【方法】
試料にはTi-Ag合金(TS)およびTi-Ag-Nb-Cu合金(TSNC:いずれも石福金属興業)を選択し、それぞれ円板状試料を切削加工した.試料は通法にしたがって最終的に鏡面にまで研磨した.参考試料として純チタン(TI:Grade 2,東京チタニウム)を棒材から切断し,同様に鏡面研磨した.
溶液は,0.9%NaClに0.1%NaFを含有するフッ化物生理食塩水に少量の乳酸でpH5.0に調製した(NAF).また, 0.9%NaCl溶液をpH5.0に調製し,参考溶液とした(SAL).これらの溶液に試料を37℃で7日間浸漬した(n=3).浸漬前後の試料は走査型電子顕微鏡(SEM:日立ハイテク)およびX線光電子分光分析装置(XPS:Kratos)で調べた.
【結果と考察】
SEM観察の結果,SALに浸漬した試料はいずれも研磨した試料と同等であった.一方で,NAFに浸漬したTSおよびTSNCでは表面に析出物が観察され,TIでは部分的に溶出による粗造な部位が認められた.XPS分析ではSALに浸漬したいずれの試料も合金構成元素が検出され,主にチタンの不動態被膜で覆われていた.一方で,NAFに浸漬したTSおよびTSNCでは,Ti2pスペクトルにTi4+の酸化状態のみ確認され,チタンの酸化が進行していた.また,TSおよびTSNCにおいてはAg3dでは酸化物よりも金属状態の割合が多く,それぞれの合金はフッ化物に対しての酸化反応性は低いと考える.
以上の結果より,フッ化物溶液中に浸漬したチタン銀系合金は酸化するが,反応速度に影響する可能性が示唆された.