講演情報
[P-67]下顎の運動軸による顎機能評価 -全運動軸と最小運動軸の空間的特徴―
*重本 修伺1、杉元 敬弘1,2、荻原 久喜1、熊澤 龍起1、重田 優子1、平林 里大1、平井 真也1、安藤 栄里子1、井川 知子1、木原 琢也1、小島 勘太郎1、佐野 吏香1、松本 勝利1,3、小川 匠1 (1. 鶴見大学歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座、2. 関西支部、3. 東北・北海道支部)
【目的】
補綴治療の目的は,形態と機能の回復と維持であるが,機能の評価は患者の主観や歯科医師の経験に依存する部分が多い.本研究では,顎機能を客観的に評価するために全運動軸(KA)と最小運動軸(LMA)の空間的特徴について検討した.
【方法】
顎機能健常者14名(N群 36.1±11.2歳)および本学部附属病院補綴科を受診した患者41名(P群 58.9±14.6歳)を被験者とした.顎運動検査を行い,仮想空間に設定した13枚の描記板で全運動軸点,最小運動軸点を算出し,それらの3次元近似直線をKA,LMAとした1).P群をKAの算出の可否2)で算出可のP+群と不可のP-群に分けた.①KA,LMAの直線性(運動軸と運動軸点の距離の平均平方和:Drms(mm)),②KAとLMAのなす角(°),③KA,LMAの最大移動量の左右差(mm)について有意水準5%で群間比較(クラスカル・ウォリス検定,マン・ホイットニーのU検定)を行った.
【結果と考察】
①Drms(図):KAは,P群の11名で算出できなかった.N群(中央値:0.12),P+群(0.26),P-群(13.79),LMAは,N群(0.04),P+群(0.14),P-群(0.30)で,KAではN群が有意に小さかった.LMAは全被験者で算出でき群間に有意差はなかった.②KAとLMAのなす角:N群(1.76), P+群(3.31)でN群が有意に小さかった.③最大移動量の左右差:KAは,N群(0.52),P+群(2.15)で,N群が有意に小さかった.LMAは,N群(0.49),P+群(0.90),P-群(0.86)で群間に有意差はなかった.N群とP群でKAとLMAに異なる空間的特徴が認められた.これらの特徴と患者の病態との関係を明らかにすることで顎機能の客観的評価の可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Shigemoto S, Bando N, Nishigawa K et al. Effect of an exclusion range of jaw movement data from the intercuspal position on the estimation of the kinematic axis point. Med Eng Phys 2014;36:1162‒1167.
2) 伊藤崇弘,重本修伺,伊藤光彦ほか.顎機能異常者における運動論的基準軸の検討.顎機能誌 2019;25:108‒109.
補綴治療の目的は,形態と機能の回復と維持であるが,機能の評価は患者の主観や歯科医師の経験に依存する部分が多い.本研究では,顎機能を客観的に評価するために全運動軸(KA)と最小運動軸(LMA)の空間的特徴について検討した.
【方法】
顎機能健常者14名(N群 36.1±11.2歳)および本学部附属病院補綴科を受診した患者41名(P群 58.9±14.6歳)を被験者とした.顎運動検査を行い,仮想空間に設定した13枚の描記板で全運動軸点,最小運動軸点を算出し,それらの3次元近似直線をKA,LMAとした1).P群をKAの算出の可否2)で算出可のP+群と不可のP-群に分けた.①KA,LMAの直線性(運動軸と運動軸点の距離の平均平方和:Drms(mm)),②KAとLMAのなす角(°),③KA,LMAの最大移動量の左右差(mm)について有意水準5%で群間比較(クラスカル・ウォリス検定,マン・ホイットニーのU検定)を行った.
【結果と考察】
①Drms(図):KAは,P群の11名で算出できなかった.N群(中央値:0.12),P+群(0.26),P-群(13.79),LMAは,N群(0.04),P+群(0.14),P-群(0.30)で,KAではN群が有意に小さかった.LMAは全被験者で算出でき群間に有意差はなかった.②KAとLMAのなす角:N群(1.76), P+群(3.31)でN群が有意に小さかった.③最大移動量の左右差:KAは,N群(0.52),P+群(2.15)で,N群が有意に小さかった.LMAは,N群(0.49),P+群(0.90),P-群(0.86)で群間に有意差はなかった.N群とP群でKAとLMAに異なる空間的特徴が認められた.これらの特徴と患者の病態との関係を明らかにすることで顎機能の客観的評価の可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Shigemoto S, Bando N, Nishigawa K et al. Effect of an exclusion range of jaw movement data from the intercuspal position on the estimation of the kinematic axis point. Med Eng Phys 2014;36:1162‒1167.
2) 伊藤崇弘,重本修伺,伊藤光彦ほか.顎機能異常者における運動論的基準軸の検討.顎機能誌 2019;25:108‒109.