講演情報

[P-69]口腔アプライアンス装着の有無による就寝時筋活動の変化 ウェアラブル筋電計による評価

*坂口 千代美1、三木 春奈2、水口 一2、窪木 拓男2 (1. 中国・四国支部、2. 岡山大学学術研究院医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野)
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【目的】
 睡眠時ブラキシズム(SB)に対する従来の診断方法の信頼性には疑問が残る.そのような中,ウェアラブル筋電計(株式会社GC)による就寝時の筋活動検査が保険収載され,患者の負担少なく就寝時咀嚼筋活動の評価が可能となった.
 一方で,SBの管理方法の一つに口腔アプライアンス(OA)の使用が推奨されているが,外来患者を対象に,その奏効について客観的に調査している報告は少ない.そこで,OA装着有無による就寝時筋活動をウェアラブル筋電計で計測し比較を行った.
【方法】
 対象は,一定期間中に外来受診し,本研究に参加の同意を得た者とした.包含基準は,1) SBの自覚・他覚や歯質の咬耗や骨隆起がある者 2) 筋電計により1時間あたりの総エピソード数(Phasic: 3回以上のBurstがあり各Burstが0.25~2秒, Tonic: 1回のBurstが2秒以上持続, Mixed: PhasictとTonicの混合を含む)が4以上の場合とした.除外基準は,1)睡眠障害のある者 2) 未成年 3) 装置が自身で取り扱いできない者とした.対象患者に装置を貸し出し,OA装着有り無しの状態で,各々就寝時の筋活動を一晩計測させた.OAは上顎型スタビリゼーションアプライアンスとした.
 評価したアウトカムは,就寝中の1時間あたりのエピソード頻度,かみしめ時平均筋活動とし,全てのエピソードによる筋活動時の平均筋活動量が検査前に行う最大噛み締め時の筋活動の何%であるか,をそれぞれ算出した.
【結果と考察】
 研究期間中に検査を行った55名のうち,SBと診断された者が52名であり,このうち10名が本調査に参加した.OA装着の有無による1時間あたりのエピソード頻度,かみしめ時平均筋活動を比較したところ,共に統計学的有意差は認められなかった(p=0.26, 0.95, t-test).しかし,エピソード数は同程等のものが2名,装着後減少した者が3名,増加した者が5名であった.平均噛み締め強さは,7名がSA装着後に減少した一方,3名は増加を示した(図に示す).
 以上より,OA装着期間が均質ではないという欠点があるものの,OA装着により就寝時の筋活動は減少するだけでなく,亢進を示す患者群が存在する可能性が示された.しかしながら本研究では,1夜のみの筋活動を観察した調査であり,OAの装着状況を考慮した詳細な検討が必要と考えられた.