講演情報
[SS-1]欠損歯列の成り立ちとその特徴から考える補綴戦略
*荻野 洋一郎1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座)
キーワード:
天然歯喪失の原因、欠損歯列の形成過程、欠損歯列の病態
歯科補綴治療は,欠損歯列やそれに起因する顎口腔系の障害に対して補綴装置を使用し,主訴の改善を行うことを目的とする.この目的を達成するためには欠損歯列の特徴を捉え,それらに適切に対処していくことが求められる.ではどのような所見を欠損歯列の特徴と考えるのであろうか?欠損歯列の形成過程において,患者が健全であった歯を突然喪失することは極めて稀であり,欠損に至る理由が必ず存在する.各年齢層において歯の喪失の原因となる歯科疾患を考えてみると,若年者ではう蝕が多く,次第に歯周疾患がその割合を上げていき,その後,歯の破折が増加することが示されている.それぞれの疾患に罹患した歯やそれによって形成された欠損歯列ではその特徴において異なる点がある.残存歯質や歯髄の有無,歯の動揺度など残存歯の評価は必須であるうえ,口腔全体では,残存歯の配置,咬合状態やその安定度,欠損部顎堤の状態,咬合力,さらには現在装着されている補綴装置の状態など包括的な評価が必要となる.ここから患者の主訴も含めた解決すべき問題点を導き,診断を行った後に治療計画を立案していく.どの問題点をどのように改善し,機能や審美性の回復を図っていくかは補綴専門医としての重大な責務であると考える.本研修会では,欠損歯列の形成過程についてその原因と特徴を考え,これらが治療計画の立案にどのように影響してくるのかを議論していきたい.今後,補綴歯科専門医の取得を目指す先生方の参考になれば幸いである.