講演情報

[SSY-2]全部床義歯治療における難症例とは 〜対峙する際に重要な思考と方策〜

*松田 謙一1,2 (1. 関西支部、2. 大阪大学)
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キーワード:

全部床義歯、難症例、高度顎堤吸収

近年、予防歯科医療や歯周・歯内治療をはじめとした歯の保存を可能とする治療の発展により、徐々に無歯顎患者が減少しつつあることが報告されている。特に、前期高齢者における無歯顎率は著しく低下していることから、無歯顎患者の平均年齢が徐々に高齢化していると考えられる。さらに、日本人の平均寿命は以前より長くなり、世界でも有数の長寿国となっている。そのため、無歯顎になってからも長期間存命することにより、顎堤吸収が進行し続けることで、高度顎堤吸収症例が増えると考えられる。さらに、高齢化に伴う全身の健康状態の悪化や認知機能の低下などの問題により、治療が難しくなる症例も間違いなく増加すると推察される。そのような難症例に対して、卒後間もない若手歯科医師が、専門的な教育を受けずして優れた全部床義歯治療を行うことは困難であると考えられる。つまり、我々補綴歯科治療を専門とする歯科医師による全部床義歯治療に対する期待が徐々に高まりつつあるのではないだろうか。本講演ではまず、全部床義歯治療における難症例とはどのような症例なのか、そしてなぜ難しくなるのかを考察したい。続いて、高度顎堤吸収や下顎位が不安定なことによる顎間関係記録が困難な症例などのさまざまな難症例に対して、少しでも機能性の高い全部床義歯治療を行うために重要になる“考え方”と各ステップにおける臨床手技についてのポイントを共有したいと考えている。