新たな時代に対応した無歯顎補綴臨床の展開

[SSY-座長] [座長抄録] 新たな時代に対応した無歯顎補綴臨床の展開

*村田 比呂司¹ (1. 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 歯科補綴学分野)

キーワード：

無歯顎補綴、全部床義歯（粘膜負担型）、インプラント義歯

これまでの歯科医療従事者の努力により無歯顎患者の割合は減少しているものの、依然高い割合で多くの高齢者が全部床義歯を装着している。さらに新たな問題として、以前に比べ高度に吸収した顎堤、菲薄な粘膜、口腔乾燥、新義歯への順応性の低下等のため、無歯顎補綴では難症例が増加している。そのため超高齢社会における無歯顎補綴臨床は従来の概念では対応できないのが現状である。
　本シンポジウムでは無歯顎補綴治療の診断、手技そして難症例への補綴処置について、無歯顎補綴の理論と実践を兼ね備えた著明な3名の講師に解説していただき議論したい。
　杉田龍士郎先生には、まず無歯顎補綴を行う際の患者の解剖学的評価を含む診断について解説いただき、通常の全部床義歯（粘膜負担型）による補綴の予後がよくないと判断される場合に適用する代替手段としてのインプラント補綴について言及いただく。
　松田謙一先生には、全部床義歯補綴治療を困難にする要因についてお話しいただいたのち、顎堤が高度に吸収した症例の印象および下顎位が不安定な症例の咬合採得等の考え方および臨床手技等について解説いただく。
　最後に中居伸行先生には、高齢者に対するインプラント治療の有効性に焦点をあて、インプラントオーバーデンチャーと固定性インプラント義歯の双方について症例を交えながら、それぞれの妥当性と限界を解説いただく。
　本シンポジウムは今後さらに難症例化する無歯顎補綴臨床の指標になるものと確信している。先生方の臨床にお役に立てれば幸いである。