講演情報

[SY1-座長][座長抄録] 咀嚼機構の進化とロボットシミュレーション

*小川 匠1、*築山 能大2 (1. 鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座、2. 九州大学大学院歯学研究院歯科医学教育学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

食塊形成シミュレーション、顎関節の進化、補綴学への応用

咀嚼は,単に食物をすり潰すだけでなく,歯や舌を駆使して食塊を形成する高度な技能を伴うプロセスです.本シンポジウムでは,「咀嚼機構の進化とロボットシミュレーション」をテーマに,進化学とロボティクスの視点から咀嚼機能についてご紹介します.
東京大学の遠藤秀紀先生には,咀嚼機構の進化についてご講演いただきます.脊椎動物の顎関節の構造変化や咀嚼機能の適応について,長い進化の歴史をたどりながら解説していただきます.特に,哺乳類の顎関節がどのように発達し,それが聴覚機能とどのように関係しているのかといった点についてもお話しいただきます.また,アリクイを例に,ヒトとは異なる咀嚼の適応戦略を紹介していただき,さまざまな動物種における咀嚼機能の多様性についても考察していただきます.
大阪大学の東森 充先生には,咀嚼のロボットシミュレーションについてお話しいただきます.従来の咀嚼シミュレータは,主に咀嚼運動の再現に重点を置いてきましたが,今回ご紹介いただくのは,咀嚼の結果として形成される「食塊」に着目した新たなシミュレータです.このシミュレータは,介護食品の適正評価や咀嚼困難者の病態理解への応用が期待されており,補綴学の新たな研究手法として大いに関心を集めることでしょう.ロボティクスの視点から咀嚼機能を解析することで,今後の補綴学研究に新たな展開をもたらす可能性があります.
 本シンポジウムでは,咀嚼機能に関する最新の知見を,進化学とロボット技術の両面から深掘りします.会員の皆様にとって,補綴学の視点を広げる貴重な機会となることを期待しております.