講演情報
[SY3-3]幹細胞を用いた歯胚再生への挑戦 〜これまでとこれから〜
*新部 邦透1 (1. 東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野)
キーワード:
歯胚再生、体性幹細胞、多能性幹細胞
幹細胞を用いた「再生歯胚」は,物質的特性が天然歯と同等と予測されるため,究極の補綴歯科治療,もしくはバイオ材料開発技術として期待されるが,重要な課題はその細胞供給源である.歯を形成する歯原性上皮細胞および神経堤由来歯原性間葉細胞は,歯の萌出とともにそのほとんどが喪失するため採取が困難であり,基礎研究もなかなか進まない現状にある.また,未だ成体由来の非歯原性細胞から安定的に歯胚構造を構築する技術も確立されていない.一方で,骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)に歯原性間葉としての能力が潜在しており(Ohazama et al. J Dent Res, 2004),成体由来細胞を用いた歯胚再生への応用が期待されている.我々のグループは,BM-MSCにわずかに含まれる神経堤幹細胞の性質を維持・増幅させる独自の振盪培養法を確立し(Ohori-Morita, Niibe et al. Stem Cells Transl Med, 2022, 特許:7588806, US11661584B2),形成した三次元的神経堤様細胞塊を歯原性間葉の細胞源として応用するべく研究を行っている.さらに我々は,人工多能性幹細胞(iPS細胞)から効率的にエナメル芽細胞を誘導する技術を確立しており(Miao, Niibe et al. Int J Mol Sci, 2021),歯原性上皮の細胞源としての研究を加速している.本セッションでは,歯胚再生に向けた幹細胞研究のこれまでの動向と未来の可能性について議論したい.