講演情報

[SY5-3]審美インプラント治療における長期安定性獲得の要件

*中野 環1 (1. 大阪大学歯学部附属病院 口腔補綴科・口腔インプラントセンター)
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キーワード:

審美インプラント、長期安定性、唇側軟組織退縮

近年のインプラント治療は、機能的のみならず審美的にも高いレベルの治療結果が要求される。特に上顎前歯部審美領域におけるインプラント治療においては、良好な審美的結果を経時的に安定させることが患者の満足いく治療結果を得る上で非常に重要である。
 前歯部インプラント治療における代表的な審美的問題点は、唇側軟組織辺縁の退縮による反対側同名歯の歯頸線との非対称な外観や歯冠長の不一致、唇側組織の豊隆不足によるインプラント体やアバットメントのディスカラーレーションや色調の不調和、単独歯だけでなく複数歯インプラント補綴も含めた不完全な乳頭の閉鎖、などである。なかでもインプラント体唇側軟組織辺縁の退縮は最も多いトラブルであり、患者の審美的要求が高い場合やハイスマイルラインの症例においては、審美上大きな懸念となる可能性がある。
 前歯部インプラント治療において長期的に安定した審美的予後を獲得するためには、理想とされる埋入ポジジョンや必要とされる唇側組織のボリューム、望ましい上部構造の形態について理解しておく必要がある。また、これらはそれぞれが密接に関連しているものである。
 今回は審美領域のインプラント治療においてインプラント体唇側組織退縮に影響をおよぼす複数の因子について検討し、長期安定性を獲得するための要件について考えてみたいと思う。