講演情報

[SY6-1]8020を達成した多数歯補綴症例からの経過報告

*鷹岡 竜一1 (1. 東京支部)
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キーワード:

多歯超高齢社会、小数歯欠損症例、可撤式補綴装置

欠損歯列を病態として捉える考え方は1970年代から始まり,その発端はパーシャルデンチャーの象徴的なトラブルが頻発するすれ違い咬合であった。やがてすれ違い咬合は,欠損歯列の終末像として位置づけられ,眼前の症例が終末像からどのくらいの距離にあるのかという病態評価と終末像にできる限り近づけないという治療目標が提示された。  一方で,国民の残存歯数の実態をみると,8020 運動がスタートした当初の8020達成率は7%程度であったが,最新の調査では51.6%に達した。つまり少歯高齢社会から多歯超高齢社会になり,欠損歯列の終末像への距離感は以前よりかなり遠くなった。また、患者の高齢化に伴い、欠損歯列の機能回復の目標は、“患者が継続して来院できる「よく咬める・より美しく」という目標”から“高齢化によって継続性が途絶えがちになり、不自由がない・不満がない・不便ではないといった「不の払拭」という目標”に変化し、術者の意識改革が必要になった。  本講演では,8020達成者すなわち少数歯欠損症例の長期経過から多数歯欠損症例へ移行させないための要件,および高齢者においてメインテナンスという関わりの連続性が認知症や全身疾患に阻まれる前に,術者としてできることなどを整理してみたい。歯の保存にこだわり,8020を推進してきた立場として歯の保存が平均寿命と健康寿命のギャップをできる限り埋めていくことに寄与していることを期待して止まない。