講演情報

[SY9-2]「補綴治療後の痛み、見極めるべき視点」
〜その痛み、本当に補綴が原因?〜

*臼田 頌1 (1. 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室)
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キーワード:

筋筋膜痛、筋触診、セルフケア

口腔顔面痛の一種である非歯原性歯痛の代表的な原因として、三叉神経痛、神経障害性疼痛、筋筋膜痛があります。

・三叉神経痛:2分以内の激痛。不応期があり、歯髄炎との鑑別が必要。
・神経障害性疼痛:神経支配領域に沿ったヒリヒリとした痛み。
・筋筋膜痛:持続性の鈍痛を特徴とし、炎症性疾患との鑑別が重要。

 これらの特徴を理解し、適切な診断アルゴリズムを用いれば、鑑別は比較的容易です。しかし、補綴治療後に訴えられる痛みには、治療が関与する「歯原性歯痛」と、関与しない「非歯原性歯痛」が混在するため、診断が難しくなります。そこで本講演では、補綴歯科医が知るべき診断のポイントを、症例を通じて紹介します。
 なかでも筋筋膜痛は特に重要です。非歯原性歯痛の原因として最も多く、ガイドラインでは約50%、当院の調査では74%を占めます。しかし、画像や血液検査では診断できず、筋触診が必須であるにもかかわらず、医療者の認知不足により適切な診断・治療が遅れ、慢性化しやすいという課題があります。

 さらに、関連痛や脳の情報処理の影響で、患者は補綴治療が痛みの原因と誤認しがちです。その結果、補綴装置の調整を繰り返しても改善しないケースが発生します。
 本講演では、筋筋膜痛のメカニズム、診断のポイント、臨床で実践できる予防・治療方法を解説します。また、日常診療での具体的な活用方法や、痛みの専門医でなくても対応すべき、かつ対応可能なアプローチを、慶應義塾大学病院や一般歯科医院での取り組みを交えながら紹介します。