講演情報
[SY9-座長][座長抄録] 口腔の痛みを見極めるために(補綴歯科治療に必要な慢性疼痛の基礎知識)
*小見山 道1、松香 芳三2 (1. 日本大学松戸歯学部クラウンブリッジ補綴学講座、2. 徳島大学大学院医歯薬学研究部 顎機能咬合再建学分野)
キーワード:
慢性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛
補綴歯科治療において、難治性の疼痛を有する患者に遭遇することは多く、一口腔単位の治療のターミナルとして、慢性の痛みを有する患者に対応せざるを得ない場合がある。そこで昨今の疼痛学の発展に伴う、神経科学に基づいた疼痛学の知識を共有し、その対応を学ぶことの意義は大きい。「慢性疼痛」は,典型的には3カ月以上持続する,または通常の治癒期間を超えて持続する痛みと定義される。病態には疼痛感作が関与しており,その機序として繰り返しの刺激で変化する神経の可塑性が起こっていると考えられている.なお,長く持続する痛みは,心理社会的な問題にも関連して,病態をより複雑なものにしている.国際疼痛学会による慢性疼痛の体系的分類から、慢性疼痛は基礎疾患を持たず、それ自体で疼痛を発現する一次性疼痛と、基礎疾患や組織障害に起因する二次性疼痛に分けられる。適切な検査や診断により、二次性の慢性疼痛は防ぐことができることも多く、その対応は歯科医師として理解しておくべきである。ただし、慢性化した場合には、両者とも中枢機序への対応が必須となる。慢性疼痛治療における目的として、痛みの軽減は慢性疼痛治療の目標の一つではあるが,第一目標ではない.医療者は,患者の生活の質(QOL)や日常生活動作(ADL)を向上させることを治療の目的とすべきである。今回3名の講師に、慢性疼痛に関する基礎的知見から臨床における対応まで講演いただき、皆さんが経験している痛みを訴えて対応が困難な症例のヒントを提供できることを期待している。