講演情報

[CS2-1]症例報告における緒言の構成と思考プロセス

*村上 和裕1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野)
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キーワード:

症例報告、緒言、新規性

症例報告は,臨床から得られた知見を学術的に共有する最も基本的な研究形態であり,歯科補綴学においては治療プロセスや臨床判断の妥当性を可視化する手段として意義がある.また,新たな治療法の提言や新規歯科材料の臨床応用を目的とした症例報告では,治療に関する新たな知見を提示する意義をもつ.その一例として,「義歯の安定に磁石を利用する」という先人の発想から試みられた治療法が症例報告として発表され,その後の研究による理論や材料の改良を経て,現代の歯科臨床で普及している磁性アタッチメントへと発展したことが挙げられる.このように,症例報告はエビデンスレベルが低いものの,臨床だけでなく,臨床と研究をつなぐ点で学術的価値は高い.
症例報告の緒言では,背景となる疾患概念や既報の整理,臨床的課題の明示を行い,「どこが新しいのか」,「どんな症例に役立つのか」といった報告の意義や目的を提示する必要がある.つまり,標準治療や既報の術式と同じような報告では,学術的価値を示すことが難しい.本講演では,質の高い症例報告を作成するための基盤として,まず症例報告の意義と学術的価値を整理し,次に新規性や臨床的示唆を抽出する視点について解説する.さらに,緒言の基本構成を踏まえて焦点を絞ったストーリー構築とタイトルへのつなげ方について解説する.症例報告を単なる経過報告に終わらせず,「なぜこの症例を報告するのか」を言語化するための思考プロセスを共有することで,質の高い症例報告を作成するハードルが少しでも下がることを期待する.