講演情報

[SY14-1]運動がもたらす鎮痛と気分調整のメカニズムを探る

*松原 貴子1,2 (1. 神戸学院大学 総合リハビリテーション学部、2. 愛知医科大学 医学部疼痛医学講座/疼痛緩和外科・いたみセンター)
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キーワード:

運動誘発性鎮痛、気分調整、神経可塑性

口腔顔面痛を含む慢性疼痛は,局所の侵害刺激のみならず,中枢神経系における疼痛調節機構の破綻や情動変容を伴い,治療に難渋しやすい.近年,運動誘発性鎮痛(EIH)に注目が集まっており,その作用は末梢組織にとどまらず,脳を含む中枢神経系の可塑的変化に基づくことが示されつつある.
運動は,下行性疼痛抑制系の賦活,内因性オピオイドやモノアミン神経系の調節を介して疼痛感受性を低下させ,前頭前野や辺縁系を含む脳機能ネットワークに作用し,気分調整や痛みへの認知的再評価を促進する.これらの変化は,慢性疼痛に特徴的な疼痛感作や恐怖回避行動の軽減と関連する.
さらに,運動を単発ではなく継続的なトレーニングとして実施することにより, sprouting やシナプス再編成を伴う機能的再編成,ならびに脳血流増加といった可塑的変化が誘導される.これらは,疼痛制御のみならず情動調節や運動制御の安定化にも寄与し,「運動が脳を変える」基盤的メカニズムとして位置づけられる.また,VRリハビリテーションも,没入による注意転導と感覚-運動ループの強化により運動学習の自動化および脳可塑性を促進することが示されている.
本講演では,我々が検討してきたEIHの基礎および臨床研究を概説し,運動が脳機能の再編成を通じて「痛みの感じ方・捉え方」そのものを変容させ得ることを示す.さらに,口腔リハビリテーションにより誘導される感覚運動皮質の可塑的変化との共通基盤に着目し,口腔顔面痛を含む難治性疼痛に対する運動・リハビリテーションの位置づけを再考したい.