講演情報

[4Yin-A-19]不均一な顧客分布下におけるLLMエージェントの空間的価格競争戦略

〇池上 暁雄1,2、高柳 剛弘1,2、橋本 龍二1,2、高田 亮介1,2、和泉 潔1,2 (1. 東京大学大学院、2. 株式会社Simulacra)

キーワード:

大規模言語モデル、空間競争、適応的価格戦略

近年,大規模言語モデル(LLM)の経済的意思決定と社会シミュレーションへの応用研究が進展している.しかし,現実の市場活動に不可欠な「空間的要素」,すなわち顧客との物理的距離や分布の偏りに対して,LLMが適応して経済的な意思決定をできるかどうかは既存研究で十分に検証されていない.そこで本研究では,LLM駆動型の企業エージェントが競争を行う空間的マルチエージェント・シミュレーションを構築し,不均一な顧客分布を導入した複数のシナリオにおいて,LLMが空間的特性に適応し,企業の重要な意思決定である価格設定と在庫管理を合理的に実行できるかを検証した.実験の結果,高い推論能力を持つモデルは,自社優位の場合は立地の独占力を認識して高価格を設定し利益を最大化する一方,他社優位のシナリオでは低価格でのシェア獲得を図るなど,空間的文脈に応じた柔軟な戦略性と高度な経済合理性を示した.対照的に,一部の汎用モデルは競争環境下での需要予測に失敗し,過剰生産と在庫の蓄積による破産が確認された.本研究は,LLMの推論性能差が,空間的な競争環境の認識と戦略的な経済意思決定の成否に決定的な影響を与えることを明らかにした.