講演情報
[5Yin-A-13]有価証券報告書の制度改革がリスク情報の開示に与えた影響
〇相川 延弘1、吉田 光男1 (1. 筑波大学)
キーワード:
自然言語処理、有価証券報告書、リスク情報開示、計算社会科学、開示制度改革
本研究は、2019年の有価証券報告書に関する開示制度改革が企業のリスク情報開示の量と質に与えた影響について、約2,000社・10年間のデータを用いて定量的に分析したものである。分析の結果、制度改革以降、リスク情報と経営戦略などの他の開示項目との関連性は有意に上昇し、粘着性(前年踏襲の度合い)は低下した。こうした変化は、企業がリスクと経営戦略を統合し、環境変化に応じて情報を更新しようと努めていることを示唆しており、前向きな開示姿勢の表れと評価できる。一方で、記述量は大幅に増加したものの、記述内容の可読性と具体性は有意に低下し、定型性(ボイラープレートの度合い)も改善が見られなかった。本研究は、2019年の制度改革が、情報の統合・更新に一定の成果をもたらしたものの、「量的充実」と「分かりやすさ」のトレードオフを招き、結果として投資家の情報処理コストを高める「情報過多」という新たな課題を生じさせている可能性を指摘する。
