講演情報

[PD1-1]直腸癌手術時の吻合法による手術成績と排便機能の検討

仕垣 隆浩, 久田 かほり, 島村 智, 執行 ひろな, 菊池 麻亜子, 藤吉 健司, 吉田 直裕, 合志 健一, 吉田 武史, 主藤 朝也, 藤田 文彦 (久留米大学外科学講座)
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背景:当科では直腸癌に対してISRやESRなどの肛門温存術式に取り組んできた.しかし,ロボット支援下手術の導入により骨盤深部までの剥離が可能となったため,DSTによる器械吻合を行う症例も増えてきた.
目的:肛門温存手術における手縫い吻合とDSTによる器械吻合の手術成績を検討し,術後の肛門機能に対する影響を明らかにする.
方法:2020年2月から2022年12月に直腸癌に対して肛門温存手術を行った83例を対象とした.手縫い吻合群(HS群)と器械吻合群(DST群)に分け,臨床病理学的因子と手術因子に関して後方視的に検討を行った.さらに,手術後または人工肛門閉鎖後の1ヶ月後,12ヶ月後のHS群とDST群の排便障害割合についても検討した.術式は腫瘍の位置で決定され,経肛門的処置を行ったISR,ESRは手縫い吻合を行い,その他はDST吻合が選択された.また,術後の排便障害は,直腸切除後症候群(LARS)の症状である頻便と便失禁のいずれも認めた場合と定義した.
結果:83例中,HS群12例,DST群71例であった.両群間で年齢,性別,BMIに差はなかった.手術成績の検討では,HS群はDST群より手術時間が長く(P=0.02),出血量が多い結果となった(P=0.0004).また,術後合併症においてHS群ではCDIIIa以上の合併症はなかったのに対してDST群では6例認められた(p=0.59).肛門側断端距離(DM)はHS群で短い傾向にあった(HS1cm(0.5-3)VS DST2cm(0.2-20)P=0.08).術後排便障害を認めた症例は,1ヶ月後では,HS群8例(66.8%),DST群24例(33.8%)と有意差を認めたが(P=0.05),12ヶ月後ではHS群4例(33.3%),DST群9例(12.7%)と統計学的な有意差はなかった(P=0.09).
結語:直腸癌手術において手縫い吻合症例はDST症例に対し,手術時間が長く,出血量が多い結果となったが,重篤な合併症少なかった.また,術後の排便障害については,短期的には手縫い吻合において悪い結果となったが,長期的には差がなくなることが示唆された.