講演情報

[P11-2-2]魚骨によると思われる直腸穿通・直腸肛門周囲膿瘍形成の1経験例

柴田 佳久 (総合青山病院肛門外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
誤飲した魚骨による消化管穿孔・穿通により治療を要する症例はみられる.魚骨を誤飲しても便とともに排出されることも多いが,時に穿孔・穿通により外科処置を有する症例もある.今回,急な発熱,肛門痛により発症し診断,内視鏡的処置で治癒した魚骨穿通により生じた直腸周囲膿瘍症例を経験した.症例:65歳男性.主訴:肛門痛 現病歴:1週間前から肛門痛が出現し徐々に増悪していた.出血や脱出はない.便意をいつも感じるが排便はなくガスのみのことが多い.腹痛はない.既往:脳動静脈瘻(内服治療).虫垂切除.尿管結石.初診時の視診では臀部表面的には肛門皮膚などに変化なし.直腸肛門指診にて,歯状線上数cm口側8時方向に直腸壁越しに圧痛を伴う腫脹を触れた.直腸肛門周囲膿瘍を疑いCT(造影)検査を追加し,内部に線状のhigh densityで異物を伴った膿瘍の存在を確認した.魚骨穿通による膿瘍形成と考え,肛門表面から距離があったため入院抗とし大腸内視鏡検査による処置とした.治療経過:内視鏡にて下部直腸に膿瘍形成によると思われる粘膜浮腫と排膿する裂傷を見だした.鉗子で探るも異物はつかめなかったため,裂創を広げてドレナージとした.保存治療を選択し,抗生剤投与・消化管安静で経過観察を行い,炎症所見の改善と画像上膿瘍縮小をみた.経口摂取を開始,排便での問題がないことを確認し退院となった.その後外来にて診察・画像検査を行い異物は存在するが膿瘍再燃なく,大腸内視鏡検査で直腸粘膜の修復を観察した.CTで魚骨と思われる像が消失したのは発症から2年であった.さらに2年観察し再燃の無いことを確認した.結語:魚骨の誤飲報告は多くみられるが,S状結腸など腹腔内臓器において穿孔性腹膜炎にて外科手術適応となり報告される症例はあるが,肛門括約筋直上の下部直腸壁に穿通して膿瘍形成を見ることは稀である.肛門膿瘍に準じ臀部からアプローチされる症例もあるが侵襲も大きく,治癒までに時間を要することや肛門機能への影響を見た症例も報告されている.今回内視鏡的に切開排膿とし治癒した症例を経験した.また,長期経過をみることで肉芽腫は長期に存在することを確認したため報告する.