講演情報

[VPD1-1]複雑痔瘻に対する診断と治療

柴田 直哉1,2,3, 前村 幸輔1, 平田 智也1, 吉田 直樹1, 柴田 みつみ1, 春山 幸洋2, 久 容輔1,2, 山本 章二朗1,3 (1.いきめ大腸・肛門外科内科, 2.はるやま医院, 3.宮崎大学)
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当院では2015年1月から2023年12月までに複雑痔瘻に対する手術は183人で,男性152人,女性31人,平均年齢47.6歳,IIIL65人,IIIH112人,IV6人であった.IIILは原発巣が後方深部隙15人,Coutney50人,IIIHは全て後方深部隙が原発巣であった.IV型は外傷性が1人,感染症1人,クローン病疑い(病理で肉芽腫)2人,原因不明2人であった.痔瘻の進展によって診断は触診のみでは不可能である.後方深部隙の診断には辻先生の提唱された経肛門的超音波検査,IIIH,IV型の診断には栗原先生が提唱された骨盤MRIが有用である.特に深達度の診断はT2Sagitalが有用であり,室生先生の執筆されたSurg Radior Anatの解剖所見と深部痔瘻の進展経路を把握して手術を行うべきである.内外括約筋間を口側に進展し,浅外括約筋,深外括約筋間から瘻管が広がる場合は原発巣がCoutneyでIIILとなり,深外括約筋,肛門挙筋から広がる場合は原発巣が後方深部隙でIIIL,IIIHとなる.手術では一次口はLay open,縫合閉鎖または一時的にシートンを留置している.シートンは1ヵ月程度で抜去する.大切なことは一次口処理の際に括約筋は当然として,肛門上皮の切除を最小限に留めることである.原発巣が後方深部隙の場合は感染瘻管は内外括約筋間を口側に肛門挙筋付着部近辺まで切除する.また,後方及び側方からアプローチして,後方深部隙から広がる直腸壁前面の感染瘻管,IIIH部,側方の痔瘻を切除する.側方の瘻管切除は随時,皮切を追加する.内外括約筋間から後方深部隙には一時的なシートンを留置し,2週間程度で抜去する.術後成績は 当院での20ヶ月での無再手術率はIIILが94.6%,IIIHが69.6%,IV型は17%であった.術後3ヶ月でのWexner,Kirwanスコアでも液状便,ガスがたまに漏れる程度で,SF8を用いた身体的,精神的サマリースコアでも術前に比べ優位に改善している.これらの点を踏まえ,当院での診断法を述べ,手術をビデオ提示したい.