講演情報

[O24-1]痔核根治手術後の創傷治癒過程におけるエクソソームの果たす役割

宇都宮 高賢1, 兼清 信介1, 竹尾 幸子2 (1.兼清外科, 2.防府消化器病センター防府胃腸病院)
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外科領域における創傷治癒促進,瘢痕形成の抑制効果に対してエクソソームが注目され,その役割には,創傷循環の改善,血管新生の促進,抗炎症効果により良好な創傷治癒を促進する.痔核手術後の創傷治癒おける間葉系幹細胞由来のエクソソームに含まれる血管内皮細胞増殖因子(VEGF),トランスフォーミング増殖因子(TGF-β1),血小板由来増殖因子(PDGF)の変動について報告する.方法:男性13人,女性17人の術後の治癒過程を見るためにレーザー血流計により痔核手術切除部位の組織血流量を測定した.血流量は,術前34.0ml/min/100g,術後9.2ml/min/100gに減少.術後5日までは変動なく,6日目からは増加が始まり,12日には24.2 ml/min/100gに直線的に増加する.その後24日まではプラトーとなり,28日には,19.5 ml/min/100gに減少した.創傷治癒過程を術後5日までを炎症期,12日までを増殖期,12日より24日までを組織再構築期,24日以降を成熟期と同定した.VEGFは,術後1日目より増加し術後7日目にピークに達し,その後低下し21日目に術前値に服した.フィブリノーゲンも術後1日目より増加し,術後7日目にピークに達しその後低下した.これは術後早期より血管の新生が始まりフィブリノーゲンの増加によって細胞外マトリックス形成により肉芽組織が促進される.PDGFも,細胞外に放出されると細胞外マトリックスの形成を促進する.PDGFは,術後4日以降に上昇が始まり14日目にピークとなりその後低下する.TGF-β1は,14日より21日までにピークを保ち,その後低下する.そのことから増殖期とともに組織再構築期に関与していると思われる.血小板数の変動とPDGF,TGF-β1の変動を見るとPDGFよりもTGF-β1のほうが相関が強い.この両者の産生が止まると肉芽の退縮が始まり成熟期に移行する.結論:痔核術後の創傷治癒では,炎症期にVEGFの発現がおこり,PDGFは,TGF-β1とともに細胞外マトリックスの産生と上皮化を促し組織再構築を促し,PDGFに続き TGF-β1の低下は肉芽の退縮,血管収縮,消失をきたし成熟期に移行させると考えられた.