講演情報

[VSY2-6]慢性裂肛に対するFissurectomy+内肛門括約筋部分切開+肛門上皮弁形成術の成績

角田 明良, 草薙 洋 (亀田総合病院消化器外科)
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目的:慢性裂肛に対する代表的術式である内肛門括約筋(IAS)側方切開の術後に生じうる肛門失禁を改善する術式として,Fissurectomy+IAS部分切開+肛門上皮弁形成術を行っているのでその成績を検証する.
方法:2018年4月から2023年5月までに慢性裂肛の診断でchemical sphincterotomy(ジルチアゼムゲル局所療法)で奏功しなかった症例を対象に当該術式を行った.術式を詳述すると,脊椎麻酔下・砕石位で潰瘍表面の線維化組織を切除してIASを露出する(Fissurectomy).次にIASの厚みの半分を目安に垂直方向にIASに切開を入れる.最後に潰瘍より口側に剥離した直腸肛門粘膜を皮下外肛門括約筋または内外肛門括約筋間組織に縫合する.裂肛随伴痔瘻例は痔瘻に対してlay openを行った.主要評価項目は裂肛治癒率である.副次的評価項目は肛門失禁の評価で,Fecal Incontinence Severity index(FISI)を用いた.肛門内圧検査を術前と術後3か月に行った.データは中央値(95% CI)で示す.
結果:当該術式を46例に行った.年齢は50歳(48-55),男女比は30:16,裂肛の部位は後方30例,前方9例,両側7例であった.手術時間は32分(32-39),入院期間は2日(2.0-2.8)であった.術後合併症は認められなかった.裂肛治癒率は96%(44/46)で,治癒までに要した期間は9週(9-11)であった.経過観察期間は27か月で裂肛の再発は認められていない.非治癒例のうち,1例は術後3か月で出血が持続したため,ジルチアゼムゲル局所療法を行って治癒した.他の1例は裂肛随伴痔瘻症例であり潰瘍は治癒したものの,lay openした痔瘻が非治癒の状態であった.FISI scoreは術前0(-0.3-0.8),術後3か月で0(0-0)と有意な変化は無かった.術後肛門失禁は認められなかった.安静時肛門内圧は術前133 cmH2O(128-150),術後109 cmH2O(100-117)と術後有意に低下した.随意収縮圧は術前317 cmH2O(294-380),術後291 cmH2O(276-359)と術後有意に低下した.
結論:Fissurectomy+内肛門括約筋部分切開+肛門上皮弁形成術は慢性裂肛に対する有効な術式で術後肛門失禁が認められなかった.ビデオでは内肛門括約筋部分切開を伴わない例を含めて提示する.