講演情報

[O24-7]痔核根治手術後の創傷治癒過程における凝固・線溶系の変動と意義

宇都宮 高賢1, 兼清 信介1, 竹尾 幸子2 (1.兼清外科, 2.防府消化器病センター防府胃腸病院)
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創傷治癒過程には,細胞の遊走,細胞外マトリクスの形成による肉芽形成と血管新生に伴う組織の再構築,上皮化を経て,創収縮により創傷治癒に至る.男性13人,女性17人の痔核根治手術術後の創傷治癒の時期を判別するためレーザー血流計にて,創部の組織血流量を測定し,炎症期,増殖期,組織再構築期,成熟期に分けた.増殖因子の変動では血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が7日目を頂点として増加し,血小板由来増殖因子(PDGF)が14日目を頂点として,形質転換因子(TGF-β1)は14日より21日目を頂点とし低下する.凝固系としての血小板数の変化,細胞外マトリックス形成に必要なフィブリノーゲンと線溶系としてのプラスミノーゲン・アクチベータ(PA)の変動を測定した.血小板数は,7日までは変動なく14日より21日に頂点とする増加を示す.増殖期より組織再構築期にかけて増加し,成熟期に至って低下した.フィブリノーゲンは,術直後より増加し7日目を頂点として低下し21日目に術前値に戻った.PAはフィブリン上で活性化されフィブリンを溶解し,血管新生によりフィブリン・マトリックスを形成する.組織型PA(t-PA)は,術後4日目より増加し,7日目を頂点として上昇,その後低下,21日目に術前値に服した.ウロキナーゼ型PA(u-PA)は,術後7日目より上昇を認め,14日目をピークとして低下し,21日目に術前値に服した.PA活性と術後遅発性出血症例の頻度を比較するとPA活性の高い時期に出血症例が多い.創傷治癒には,凝固・線溶系が増殖期,組織再構築期に大きく関与し,その間線溶系が活性化し出血し易い時期があると結論で来た.