講演情報

[VPD2-9]傍結腸ストーマヘルニアと傍回腸導管ヘルニアの臨床的特徴と手術成績の比較検討

諏訪 勝仁1, 牛込 琢郎1, 榎本 浩也1, 北川 隆洋1, 力石 健太郎1, 岡本 友好1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院, 2.東京慈恵会医科大学消化管外科)
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背景:傍ストーマヘルニア(PSH)はストーマ造設後最頻の合併症であり,手術適応となることも少なくない.PSHの手術成績はストーマの種類にかかわらず総合的に論じられることが多いが,その解剖学的な特徴などが異なることから,別個に検討されるべきである.
 目的:傍結腸(単孔式)ストーマヘルニア(PCH)と傍回腸導管ヘルニア(PICH)の臨床的特徴および手術成績の相違を検討する.
 方法:2012年6月から2023年9月までに慈恵医大第三病院で行われたPSH手術(n=39)について,PCH(n=30)とPICH(n=9)のデータ(中央値[範囲])を比較検討した.
 結果:PCHとPICHの比較において,患者背景は,年齢 77(48-88)歳,72(48-84)歳,性別(M:F)12:18,6:4,body mass index 22(18-32)kg/m2,24(22-28)kg/m2でいずれも差はなかった.ヘルニア性質では,初発:再発 22:8,8:1,ヘルニア部位(内側:外側:頭側:尾側:全周)18:6:3:2:1,3:4:2:0:0,正中腹壁瘢痕ヘルニア併存 8(27%),4(44%),最大径 6(1-16)cm,5(2-15)cmでいずれも差はなかった.腹腔内癒着スコア重度(Zühlke score=3,4)は7例(23%),5例(56%)(p=0.0662)と統計学的有意差はないものの,PICHで強い傾向があった.施行術式は,PCHで腹腔鏡下Sugarbaker法(LSB)28例(93%),内視鏡的Pauli法(ePauli)2例(7%),PICHでLSB 7例(78%),ePauli 2例(22%)と同等であった.開腹移行例は1例(3%),2例(22%)(p=0.0622)とPICHで多い傾向があった.手術時間 166(65-386)分,240(124-423)分で有意にPIHが長かった(p=0.0278).周術期合併症は2例(7%),2例(22%),術後在院日数は8(4-19)日,9(6-14)日でいずれも差はなかった.経過観察期間57(2-110)カ月,55(20-104)カ月で,再発は4例(13%),0で統計学的有意差はなかった.
 結語:PCHとPICHの比較において,PICHは腹腔内癒着が強く,開腹移行例が多い傾向があった.また手術時間においてもPICHが長く手術が困難である可能性が示唆された.PCHとPICHの治療成績は別個に検討されるべきである.