講演情報
[O17-6]全国の労災病院における大腸癌患者に対する治療と仕事の両立支援の取り組み
神山 博彦 (労働者健康安全機構東京労災病院消化器外科)
【背景】全国の労災病院では働き方改革実行計画にある「治療と仕事の両立支援」を病院で実践すべく取り組んできた.癌患者は診断後早期の離職率が高いことが指摘されており,その予防が重要である.大腸癌は増加しており集学的治療や人工肛門は就労継続に際して課題となる.本検討では大腸癌患者に対する労災病院での両立支援について現状を報告する.【対象】2013年3月から2023年9月までの間に全国の労災病院で治療と仕事の両立支援を受けた患者のうちデータベース登録に同意が得られている症例を対象とした.【結果】癌患者に対する両立支援介入は756例あった.癌のなかでは,消化器癌は40%と最も多く,乳癌31%,肺癌12%,婦人科癌5%,泌尿器癌4%などが続く.復職率は癌全体で74%,消化器癌は72%であった.消化器癌の内訳は直腸30%,胃25%,結腸23%,膵10%,肝4%,食道3%などとなっていた.手術率・化学療法率は直腸癌81・69,大腸癌61・46であった.直腸癌の放射線治療率は9%であった.復職率は直腸癌75%,結腸癌81%であった.直腸・結腸癌では人工肛門造設率は27%であり,復職までの日数はストマの有無で50(あり)・24(なし)日(中央値)とストマありの方が長かったが,復職率は91・77%とストマありの方が高くなっていた.【考察】直腸・結腸癌は消化器癌の中で最も多い.集学的治療や人工肛門造設といった侵襲の大きな治療があるが,適切に支援すれば少なくとも人工肛門造設は離職率には影響しない可能性がある.【結語】大腸癌患者に対する治療と仕事の両立支援が医療機関で受けられることが望まれる.