講演情報
[P15-1-3]骨盤内臓全摘後にS状結腸人工肛門と左腹壁間に嵌頓した胃内ヘルニアの1例
古谷 晃伸1,2, 曽山 弘敏1, 毛利 康一1, 田中 智子1, 東野 展英1, 山岸 農1, 大坪 大1, 沢 秀博1, 田中 基文1, 岡崎 太郎1, 鈴木 知志1, 藤野 泰宏1 (1.兵庫県立がんセンター消化器外科, 2.淀川キリスト教病院外科)
症例は60歳代男性,肛門痛を主訴に前医を受診し直腸癌を指摘され当科を紹介受診した.身体所見に特記事項なし,既往歴はIgG4関連疾患.下部消化管内視鏡検査で歯状線にかかる全周性の2型病変を認め,生検結果はtub1であった.造影CTおよびMRI検査で前立腺への浸潤を疑った.以上より直腸癌(Rb,Circ,Type3,tub1,cT4bN1bM0,cStage IIIcと診断し腹腔鏡下骨盤内臓全摘術D3LD2を施行した.S状結腸人工肛門を直達経路で造設した.術後経過良好だったが術後21日後に嘔吐を認めた.造影CTで拡張した胃がS状結腸人工肛門と左腹壁に嵌入している所見を認め胃の内ヘルニア嵌頓と診断した.同日は嘔吐によって自然軽快しその後再燃なく術後28日目に退院となった.腹痛嘔吐主訴に再診しCTで前回と同様の画像所見を認め胃の内ヘルニア嵌頓再燃と診断した.再手術として人工肛門口側のS状結腸を腹壁固定する腹膜化を計画した.術中所見でS状結腸は後腹膜及び左尿管と強固に癒着しており剥離を断念した.胃を可及的に肛門側けん引し胃体部を腹壁に4針固定した.再手術4日後nに食事を再開したところ腹痛を認めた.CTで胃体部の固定部を軸として胃が捻転し,胃前庭部がS状結腸人工肛門と左腹壁間に嵌入している所見を認め再々手術を行った.胃の固定糸を抜糸して胃の捻転を解除し,S状結腸を後腹膜及び左尿管から慎重に剥離しS状結腸を腹壁固定する腹膜化を行った.再々手術後は麻痺性イレウスを認めた以外は経過良好で18日後に退院した.再々手術後3ヶ月経過したが胃の内ヘルニア再燃を認めていない.稀な合併症を経験したので文献的考察を踏まえ報告する.