講演情報
[P18-2-7]閉塞性直腸癌に対する横行結腸ストーマ造設,術前治療,低侵襲手術による治療シークエンスの成績―腫瘍学的観点および肛門機能の観点をふくめた検討―
野澤 宏彰, 坂元 慧, 佐々木 和人, 室野 浩司, 江本 成伸, 横山 雄一郎, 松崎 裕幸, 阿部 真也, 永井 雄三, 品川 貴秀, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
【背景・目的】閉塞性直腸癌に対して,当施設では横行結腸ストーマ造設を先行させて,術前治療ののち低侵襲アプローチによる手術を行っている.本研究では腫瘍学的および機能的な観点から,閉塞性直腸癌に対するこの治療シークエンスの成績を非閉塞性直腸癌との比較により検討した.【方法】後方視的に当施設で2016年4月―2024年3月に術前治療後に腹腔鏡手術(ロボット手術を含む)を行った遠隔転移のない直腸癌症例を対象とした.ストーマ造設先行例を“S群”,その他を“NS群”に分類した.両群で患者の臨床病理学的因子(性別,body mass index,病期,術前治療の種類など)や周術期因子(術式,手術時間,出血量,術後合併症など),術後生存(無再発生存=RFS,全生存=OS),ならびに肛門機能検査(最大静止圧=MRPおよび最大随意収縮圧=MSP)を比較した.【結果】S群10例(男6,女4),NS群99例(男64,女35)であった.術前治療は,全身薬物療法3例,(化学)放射線療法100例,両者6例であった.患者背景は両群間に差はなかった.直腸切断術はS群1例,NS群31例で選択され,一時的ストーマがNS群の51例に造設された.S群とNS群で手術時間(中央値 485分vs 442分,p=0.50),出血量(中央値 195 ml vs 90 ml,p=0.64)や術後合併症に有意差はなかった.対象全体の病期は0期16例,I期36例,II期29例,III期28期であり(群間差なし),予後についても3年RFS率はS群67%,NS群77%,5年OS率はS群100%,NS群93%であった(有意差なし).S群,NS群の肛門温存症例では,直腸手術後1年のMRP中央値が各々35 mmHg,42 mmHg,MSP中央値が118 mmHg,116 mmHgと同等であった(測定症例のみ).【結論】閉塞性直腸癌に対してストーマ造設を先行させ術前治療後に低侵襲手術を行う治療は,腫瘍学的にも肛門機能の観点からも非閉塞性直腸癌と同等の成績が得られる妥当なものと考えられた.