講演情報

[P6-2-3]結腸癌に対するD3郭清が術後補助化学療法に及ぼす影響について

杉浦 清昭1, 竹部 兼輔1, 青山 純也1, 大島 剛1, 菊池 弘人2, 岡林 剛史3, 愛甲 聡1, 北川 雄光3 (1.永寿総合病院外科, 2.川崎市立川崎病院外科, 3.慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)
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背景
 リンパ節転移を伴う結腸癌に対して術後補助化学療法を行うことが予後改善に寄与することが報告されている.しかしながら,evidenceの多くは海外の報告に基づいていおり,本邦において進行大腸癌に対する標準治療とされるD3郭清が術後補助化学療法の与える影響についてはいまだ明らかではない.今回われわれは,結腸癌に対するD3郭清が術後補助化学療法に及ぼす影響について検討することを目的とした.
 方法
 慶應義塾大学病院およびその関連施設で作成されたKeio Surveillance Epidemiology and End Results:K-SEER データベースから,2015年1月から2016年12月の間にD3郭清を伴う手術を施行したpStageIII大腸癌治癒切除症例324例を抽出し後方視的に解析した.主解析項目は無再発生存率(Recurrence-free Survival:RFS)とし,副次的解析項目は癌特異的期間(Cancer-Specific Survival:CSS)とした.対象をAdjuvant Chemotherapy群(AC群)とnon-Adjuvant Chemotherapy群(non-AC群)に分け,Propensity score matching(PSM)を用いて背景因子を調整した上で生存解析を用いてD3郭清が術後補助化学療法の有用性に与える影響を検討した.
 結果
 AC群239例およびnon-AC群85例であった.PSMを行うとAC群とnon-AC群それぞれ84例が抽出された.PSM後のAC群とnon-AC群の間で,RFS(5-year RFS:AC群 69.6% vs non-AC群 70.1%,p=0.820),CSS(5-year CSS:AC群 88.0% vs non-AC群 81.5%,p=0.295)で共に有意な差は認めなかった.High-risk Stage III(any T N2)に限るとAC群はnon-AC群と比較してRFS(5-year RFS:AC群 58.0% vs non-AC群 36.6%,p=0.021),CSS(5-year CSS:AC群 77.4% vs non-AC群 55.5%,p=0.017)共に有意に良好であった.多変量解析において術後補助化学療法はRFS(HR 0.651(0.353-1.201,p=0.169)とCSS(HR 0.473(0.199-1.126,p=0.091)において相関を認めなかった.High-risk Stage IIIに限るとRFS(HR 0.376(0.174-0.806,p=0.012),CSS(HR 0.273(0.094-0.797,p=0.017)で共に有意な予後規定因子であった.
 結語
 D3郭清を伴うStage III結腸癌治癒切除症例においては,術後補助化学療法の適応を検討する必要がある可能性が示唆された.今後さらなる症例の集積が必要である.