講演情報
[VSY1-8]横行結腸癌に対する腹腔鏡手術アプローチの変遷―ロボット支援手術導入後の変化―
田村 公二, 永吉 絹子, 藤本 崇聡, 久野 恭子, 水内 祐介, 大内田 研宙, 中村 雅史 (九州大学病院臨床・腫瘍外科学)
横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術は,各施設でアプローチ方法が異なるのが現状である.中結腸動静脈周囲のリンパ節をいかに安全・確実に郭清するかが重要であるが,重要臓器が隣接しまた血管走行の変異も多く難易度が高い.
腫瘍の局在により授動・郭清範囲が異なるが,症例によっては肝弯曲および脾弯曲授動が必要となる.このため各施設で各々アプローチ法が工夫されている.血管走行のバリエーションも多彩で,約15%の症例で副中結腸動脈が存在し(自験例,2019),約20%の症例で第一空腸静脈はSMAの前面を走行するとされており(Hamabeら,2018),術前のthin sliceの造影CTは必須と考えている.
われわれの施設では,2016年より右側結腸の受動は,十二指腸水平脚前面からの後腹膜剥離先行アプローチを導入した.合計120例の右側結腸癌の検討では,内側アプローチと比べて手術時間は有意に短縮し(208分vs 271分,P=0.01),出血量・合併症率に差はなかった.左側結腸切除における脾弯曲結腸の授動は,空腸曲外側・下腸間膜静脈(IMV)背側からの内側アプローチを定型化し,脾弯曲部癌50例で手技の定型化前後(前32例,後18例)に分けて比較検討すると,定型化後は手術時間が有意に短縮し(277分vs. 345分,P=0.03).術後合併症には差がないことを報告した(永吉ら,2022).これらは体位変換も最低限ですみ,ロボット支援手術においても同様の手順で行っている.一方,中結腸動静脈周囲のリンパ節郭清を行う場合は,これまで大網切開・頭側操作を先行し頭側・尾側アプローチを併せた挟み撃ち法で行ってきた.しかしPfannenstiel切開を用いたロボット支援手術では,体型によっては頭側アプローチの視野が取りづらく,時に複数回の体位変換を要する.最近では腹腔鏡手術でも尾側アプローチ先行での手術を導入し頭側からは最低限の操作のみとしている.
手術手技の定型化は若手外科医の教育に有用であり,さらに働き方改革の中で手術時間の短縮にもつながる.今回,当科での横行結腸癌に対する腹腔鏡下D3リンパ節郭清術の手術手技,特に拡大右半結腸切除など広範囲の受動やSurgical trunkの郭清,体腔内吻合の症例などの手術ビデオを供覧する.
腫瘍の局在により授動・郭清範囲が異なるが,症例によっては肝弯曲および脾弯曲授動が必要となる.このため各施設で各々アプローチ法が工夫されている.血管走行のバリエーションも多彩で,約15%の症例で副中結腸動脈が存在し(自験例,2019),約20%の症例で第一空腸静脈はSMAの前面を走行するとされており(Hamabeら,2018),術前のthin sliceの造影CTは必須と考えている.
われわれの施設では,2016年より右側結腸の受動は,十二指腸水平脚前面からの後腹膜剥離先行アプローチを導入した.合計120例の右側結腸癌の検討では,内側アプローチと比べて手術時間は有意に短縮し(208分vs 271分,P=0.01),出血量・合併症率に差はなかった.左側結腸切除における脾弯曲結腸の授動は,空腸曲外側・下腸間膜静脈(IMV)背側からの内側アプローチを定型化し,脾弯曲部癌50例で手技の定型化前後(前32例,後18例)に分けて比較検討すると,定型化後は手術時間が有意に短縮し(277分vs. 345分,P=0.03).術後合併症には差がないことを報告した(永吉ら,2022).これらは体位変換も最低限ですみ,ロボット支援手術においても同様の手順で行っている.一方,中結腸動静脈周囲のリンパ節郭清を行う場合は,これまで大網切開・頭側操作を先行し頭側・尾側アプローチを併せた挟み撃ち法で行ってきた.しかしPfannenstiel切開を用いたロボット支援手術では,体型によっては頭側アプローチの視野が取りづらく,時に複数回の体位変換を要する.最近では腹腔鏡手術でも尾側アプローチ先行での手術を導入し頭側からは最低限の操作のみとしている.
手術手技の定型化は若手外科医の教育に有用であり,さらに働き方改革の中で手術時間の短縮にもつながる.今回,当科での横行結腸癌に対する腹腔鏡下D3リンパ節郭清術の手術手技,特に拡大右半結腸切除など広範囲の受動やSurgical trunkの郭清,体腔内吻合の症例などの手術ビデオを供覧する.