講演情報

[R13-6]遠隔転移切除不能な有症状大腸癌における原発巣制御の検討

小嶋 忠浩1, 倉地 清隆1, 立田 協太1, 杉山 洸裕1, 赤井 俊也1, 鳥居 翔2, 美甘 麻裕1, 深澤 貴子3, 竹内 裕也1 (1.浜松医科大学外科学第二講座, 2.浜松医科大学外科学第一講座, 3.磐田市立総合病院消化器外科)
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【背景・目的】切除不能な遠隔転移を有する大腸癌において,他の療法では制御困難な原発巣による症状がある場合,原発巣切除等の制御を行った後に,全身化学療法が勧められている.当科における原発巣の制御の治療方針は,原発巣・患者の状態を考慮した上で,基本的に第一選択として原発巣切除,続いてパイパス手術,人工肛門造設を選択している.しかし,原発巣切除が患者に及ぼす影響については報告が少ない.【方法】2012年から2020年までに当院で症状を有する遠隔転移切除不能な原発性大腸癌に対して,原発巣切除した群を切除群,バイパス手術・人工肛門造設群を非切除群として後方視的に周術期・予後成績等を比較検討した.術前から,術後に化学療法を計画していないものは除外した.【結果】切除群38例,非切除群15例(バイパス手術6例,人工肛門造設9例)であった.患者背景(年齢,性別,BMI,ASA-PS,緊急手術,腫瘍位置,Stage IVa/IVb/IVc)は両群に有意差を認めなかった.手術時間(切除群 vs 非切除群:190 vs 103分),出血量(切除群 vs 非切除群:43 vs 4ml)は非切除群の方が良好で,術後入院期間(切除群 vs 非切除群:13 vs 14日)は同等であった.周術期合併症(Clavien-Dindo grade≧III)は(切除群 vs 非切除群:10.5 vs 28.6%)同等であり,非切除群は4例(21.4%)で残存腫瘍のため晩期合併症が発生した.化学療法導入症例(切除群 vs 非切除群:86.8 vs 60.0%)では統計学的有意差はなく,手術後化学療法導入待機期間(切除群 vs 非切除群:38 vs 25日)は非切除群で短く,3年全生存期間(切除群 vs 非切除群:23.2% vs 27.0%)は同等であった.【考察】患者のQOLや晩期合併症を考慮すると,化学療法の奏功が比較的期待できる症例に対しては,基本的に原発巣切除をした方が良いと考える.しかし,当検討において全生存期間に影響しないものの,切除群は化学療法導入が遅れる傾向にあり,合併症の発生等に留意して適応は慎重に検討するべきである.