講演情報
[R18-6]大腸原発胎児消化管類似癌の2例
中村 祐介, 福田 啓之, 唐木 洋一 (千葉県済生会習志野病院外科)
胎児消化管類似癌は胃癌でしばしば認められる予後不良な組織型であるが,大腸原発胎児消化管類似癌についての報告は殆どなく稀である.今回我々は大腸原発胎児消化管類似癌の2症例を経験したため報告する.【症例1】75歳女性.腹痛と血便を主訴に近医を受診し,直腸S状部に2型腫瘍を指摘され,手術目的に当科へ紹介となった.術前の生検検体に対する病理組織検査では中分化型腺癌であった.当科で腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行し,切除検体に対する病理組織検査で淡明かつ豊富な胞体を持つ腫瘍細胞の腫瘍性増殖を認め,胎児消化管類似癌と診断された.【症例2】62歳男性.便潜血検査陽性に対する精査目的に当院へ紹介となり,S状結腸に2型腫瘍を認めた.術前の生検検体に対する病理組織検査ではtub1-2腺癌であった.当科で腹腔鏡下S状結腸切除術を施行し,切除検体に対する病理組織検査で中分化型管状腺癌の診断となったが,部分的に淡明な細胞質を持つ腫瘍細胞の腫瘍性増殖を認め,胎児消化管類似癌が混在する腺癌と診断された.【考察】大腸原発胎児消化管類似癌は極めて稀な腫瘍であり,本邦の大腸癌取り扱い規約(第9版)にも記載がなく,報告例を検索した限りではこれまでに自験例を含め11例の報告を認めるのみであった.報告例の平均年齢は61.4歳であり,男性6例,女性5例で,原発部位はS状結腸が7例,直腸が3例,上行結腸が1例であった.平均腫瘍径は48.9mmであり,壁深達度はT3が7例,T4aが2例,T2が2例で,胎児消化管上皮マーカーを用いた免疫染色では,全例でGPC3もしくはSALL4が陽性であった.脈管侵襲は6例に認められ,領域リンパ節転移は7例で陽性であった.また同時性,異時性を含む遠隔転移を6例に認め,遠隔成績では診断後1年以内の原病死を4例に認め,平均生存期間は16.6ヶ月であった.今回の検討から大腸原発胎児消化管類似癌は,臨床的に左側結腸に好発し,胃原発例と同様に高率に脈管侵襲や遠隔転移を認め,生物学的に高悪性度な腫瘍であると考えられた.