講演情報

[VPD4-5]直腸脱に対するDelorme法とGMT法の臨床アウトカム比較

大橋 勝久1, 大橋 勝英1, 佐々木 章公2, 北川 一智2 (1.大橋胃腸肛門科外科医院, 2.十全総合病院)
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【はじめに】Gant-Miwa+Thiersch法(以下GMT法)は直腸脱に対する本邦の古典的手術だが,再発率が高く,Thiersch法による術後感染や排便機能障害が問題とされ忌避傾向にある.当院も経肛門手術としてGMT法からDelorme法へ術式を変更したが,一定の再発と術後排便機能に問題を感じ,GMT法へ回帰した.実臨床における両術式のアウトカムを比較し検討する.
【方法】5cm以下の直腸脱単独,または全身麻酔による経腹手術が不適切な患者を経肛門手術の対象とした.同一術者が行った平成23年~令和3年のDelorme法70症例をD群,平成29年~令和6年のGMT法72例をGMT群とし,全例前向き登録し後方視検討した.
【結果】背景因子では,年齢(D:81.1±10.9/GMT:85.6±7.6歳 以下同様にD/GMTの順番で記載),PS(1.6±1.3/2.3±0.8),ASA-PS(2.3±0.9/2.7±0.7),脱出長(2.3±0.9/2.7±0.7cm),POP合併(8.6%/23.6%)で有意差を認めた.再発はD25.7%/GMT5.6%,Clavien-Dindo Grade3以上の合併症はD14.3%/GMT1.4%といずれもGMTで有意に少なかった.術後3ヶ月目の排泄機能(CCFIS,FISI,FIQL,CSS,PAC-QOL,PFDI,ICIQ)改善をWilcoxon t-testで検討したが,D群はFISI,FIQL,CSSで有意な改善を認めず,排泄機能の改善が限定的だったのに対し,GMT群では精神的な不安に関するPAC-QOLスコア以外の全ての項目で有意に改善した.
【考察】GMT群は基礎疾患やADLに問題を有する高齢者が多く含まれていたにもかかわらず,術後合併症や再発が極めて少なかった.伸縮性のLeeds Keio Meshを,万全な感染対策の上で定型化し運用していることが影響していると考える.危惧されるメッシュ感染や露出に伴うメッシュ抜去,摘便を繰り返す症例は1例も経験なく,術後排泄機能にも優れた術式である.
【まとめ】感染対策に留意し定型化されたGMT(with Leeds Keio Mesh)法は,複雑なPOPのない直腸脱患者に幅広く受け入れられる手術である.様々なリスクを有する高齢者への不用意な経腹手術を回避できる優れた術式なので,留意すべき術式のポイントをあわせて動画で解説する.