講演情報

[VSY2-1]肛門狭窄に対する有茎皮弁術の有用性

八子 直樹1, 斎藤 昌美2 (1.医療法人桜樹会八子医院, 2.福島県立医科大学形成外科学講座)
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<背景>肛門術後の瘢痕性狭窄は肛門上皮の過剰な切除や全周性の切除に伴い便排出障害など患者QOL低下をきたす.特に肛門上皮がない全周性狭窄(ホワイトヘッド肛門)は難治性である.また慢性裂肛による肛門狭窄に対しては皮膚弁移動術(SSG法)が行われているが狭窄が強度の場合は術後長期成績をみると創部の瘢痕により再狭窄症例も経験する.今回,形成外科とのコラボにより,肛門拡張を図るべく有茎皮弁術を導入した.術式の実際とその有用性について報告する.<有茎皮弁術について>皮弁とは血流を維持した状態の皮膚,皮下組織の塊であり移植床の血流によらず生存可能という植皮にはない特徴を有する.創の近傍から皮弁を挙上し.切り離すことなく移動する有茎皮弁術は組織の連続性を保ち,瘢痕狭窄部を皮弁で置換することにより狭窄を解除することができる.また狭窄部が正常の皮膚組織で置換され,拡張させるので術後の再狭窄も防止できる.<術式の実際>瘢痕狭窄部を観察し,最も瘢痕が強度の部位で瘢痕部を切離し用手的に拡張を図る.同部外側皮膚にV字または台形に皮弁を作成する.狭窄解除部をおおうべく皮膚,皮下組織の深部まで切離し,茎部からの血行を維持して,皮弁を作成する.皮弁を瘢痕部へ移動させ(前進皮弁),移動した皮弁を緊張がかからない状態で皮弁内側と直腸粘膜,皮弁両側と皮膚,最後に移動した皮膚と皮膚を3-0吸収糸で結節縫合により固定する.縫合しながら皮弁の色調,温かみ,張り,辺縁からの出血などを観察し,皮弁の血流に問題がないことを確認する.術後も創部の観察することが重要である.<術後の治療成績>2022年9月から2024年3月まで30例の有茎皮弁術を行った.肛門狭窄の原因は17例がホワイトヘッド術後,5例が痔核結紮切除後狭窄,慢性裂肛による狭窄が8例であった.全例で肛門狭窄は解除することができた.術後合併症として1例で直腸脱(GMT法にて改善).皮膚,皮膚縫合部の離開が5例で認めたが2次治癒した.<まとめ>肛門拡張を目的とする有茎皮弁術は血流の保たれた皮弁による狭窄部の置換であり,長期的な狭窄解除術として有用と考える.