講演情報

[VWS3-1]直腸脱に対する腹腔鏡下Suture rectopexyの利点と欠点

鈴木 紳祐, 五代 天偉, 船岡 健太郎, 古山 和樹, 小野 由香利, 高村 卓志, 伊藤 麻衣子, 熊切 寛, 鈴木 紳一郎 (藤沢湘南台病院外科)
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【背景】
本邦では直腸脱に対する経腹的手術は,開腹直腸固定術ないし腹腔鏡下直腸固定術が保険収載されている.当初,当院では直腸固定術の方法として,直腸後方固定術,直腸前方固定術を行っていた.ただ,便秘が増えることやメッシュを使う事で将来的に発癌した際の手術が煩雑となることから,長期的な視点で腹腔鏡下Suture rectopexy(LSR)を選択するようになった.
【目的】LSRの治療成績を集積し,その安全性と有用性を検討する.そして,LSRの利点や欠点について手術ビデオを用いて解説する.
【方法】
2022年7月から2023年12月までに,当院でLSRを施行した23例を対象とした.手術は,5ポートで行った.S1/2のレベルの骨膜に剥離受動した直腸を2針固定し,切開した腹膜を閉鎖して終刀とした.周術期成績,合併症,直腸脱の再発の有無を評価した.
【結果】
平均年齢は70.6歳,女性が21例,男性は2例であった.直腸の平均脱出長は6.1cmだった.平均BMIは20.7でやせ型が多かった.平均手術時間は113分,そのうち骨盤腔内での仙骨前面の骨膜と直腸の縫合や開放した腹膜の縫合にかかった平均時間は31.7分であった.合併症は皮下気腫を6例に認めたが,治療は必要としなかった.1例は,高度癒着症例で,気腹直後に開腹移行した.術後平均在院日数は9.5日,経過観察期間は平均6.8ヶ月で再発症例は2例認めた.ともにGMT手術を行い,その後は再発を認めていない.便秘スコアリングシステム(CSS)平均値は,術前:術後1ヶ月=8.8:5.8と術後に改善しており,手術によって便秘が増えることはなかった.
【考察】
LSRは剥離範囲が少なく,メッシュも使用しない.そのため,便秘が増えることはなかった.また,仮に発癌したとしても,異物は入れていないため固定した糸を切離すれば腸管の授動は可能である.今後は,症例数を増やし,また経過観察期間を伸ばして長期的な安全性と有用性を検討する必要がある.