講演情報

[R17-2]当院での直腸脱手術の工夫~Gant-Miwa-Thiersch法におけるダブル十字結紮~

木村 壮伸, 阿部 忠義, 二科 オリエ, 木村 光宏 (仙台桃太郎クリニック)
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高齢者における肛門疾患の1つとして,直腸脱が挙げられる.脱出により歩行が困難になるなどADL低下の要因にもなり得るため,直腸脱の治療は重要視されており,今後も需要が高くなると想定される.大腸肛門科である当院では,直腸脱に対する治療として低位脊髄くも膜下麻酔下,ジャックナイフ体位でのGant-Miwa-Thiersch法による手術加療を行っている.従来通り脱出直腸の粘膜を結紮により縫縮することで肛門内への環納を図っていくのだが,術後の治癒過程での結紮腸管の吊り上げ効果を高めるために当院では結紮部の工夫をしている.元来,Gant-Miwa法では脱出腸管の結紮により肛門内へ環納,その後結紮部が壊死・脱落した後の潰瘍部が瘢痕となり縫縮を維持することで再脱出の予防に繋がると考えられている.これを踏まえて当院では12時,3時,6時,9時方向の4方向で方向を揃えて結紮をし,縫縮の張力が不足しているようなら,さらにそれぞれの間を方向を揃える形で結紮を追加していく方式をとっている.それぞれの十字方向での結紮ラインが交叉することから,ダブル十字法としている.結紮の方向を揃えることで,結紮部の脱落後の潰瘍も大きな線状のラインとなり吊り上げ効果が高くなると考えている.その上,Thiersch法では術後の感染対策のために清潔操作下でナイロン糸を用いた方式を取っている.術後においても排便コントロールを重視しており,術後も数日間の入院下での排便指導を経てからの退院としている.当院での手術成績としては2019年1月~2023年3月までの期間で21例の手術を施行しており,術後の再脱出を含めた再発は0例,ナイロン糸の感染などの周術期合併症も0例となっている.現在当院では低位脊髄くも膜下麻酔での手術を基本としているが,肛門括約筋への局所麻酔下でも肛門の弛緩を得られ十分に手術も出来ることから,抗凝固薬ならびに抗血栓薬の内服患者でも施行できる余地は十分にある.低侵襲であるGant-Miwa-Thiersch法での根治性を高められることは,今後の症例増加が予想される未来においても非常に意義のあることと考えられる.