講演情報
[P7-2-4]有床診療所での炎症性腸疾患に対する診療の実際
木村 壮伸, 阿部 忠義, 二科 オリエ, 木村 光宏 (仙台桃太郎クリニック)
近年,診断技術の向上に伴い潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の罹患数は増加傾向となっている.大腸肛門科である当院でも下血や腹痛,下痢を主訴として受診し,内視鏡検査などの精査の結果,上記診断となる症例が増加している.有床診療所であり,かつ大腸肛門の専門科医院である当院での炎症性腸疾患に対する診療の実際について報告する.上述のとおり,炎症性腸疾患として診断される方は1ヶ月以上持続する腹部症状や下血,粘血便といった症状を主訴に受診される方が多い.肛門鏡での診察にて直腸の炎症所見や粘血便が見られる場合には全大腸内視鏡も積極的に行うようにしている.全大腸内視鏡検査により炎症性腸疾患を疑うような場合には生検による病理検査も提出し,確定診断を得るようにしている.クローン病の場合は肛門病変が先行する場合もあるため大腸所見は軽微であっても,痔瘻根治手術の切除標本から類上皮肉芽腫が検出され診断に至る場合もある.上記診断が得られた後に5-ASA製剤による治療から開始として,全身状態を定期的に評価しながら薬剤の継続・変更および剤型の変更などを検討していく.定期的な評価としては,定期処方時における肛門鏡診察での直腸粘膜の評価や年1回の全大腸内視鏡検査,近年病勢評価として有用性が報告されているロイシンリッチαグリコプロテイン(LRG)を含めた採血検査を3ヶ月に1度の頻度で継続している.症状増悪時にはブデゾニド製剤も併用しつつ寛解導入を狙っていくが,寛解導入が得られない場合はステロイド(プレドニン)の使用も検討する.ステロイド依存性・抵抗性ならびに5-ASA不耐を認めるような場合には,生物学的製剤の導入や急性増悪時の緊急手術も視野に入れて総合病院への紹介としている.生物学的製剤は有用性こそあるものの,高価であることがネックである.高額で不良在庫が許されない製剤でもあり経営としてリスクになりうることから,当院では総合病院へ紹介の方針としている.今後も炎症性腸疾患の患者数は増加傾向を維持していくと予想されるため,先進的な治療を行う総合病院との連携を密にして定期的な経過観察や治療継続を行える必要があると考えている.