講演情報

[P8-2-5]上行結腸癌の術後1か月後に遅発性尿管損傷を来した一例

芦立 嘉智, 大柏 秀樹 (浦河赤十字病院)
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症例は80歳女性.貧血の精査で上行結腸癌,多発肝転移の診断となり,前医で腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.術後の経過は良好で術後14日で退院となった.化学療法目的に当院に紹介となった.当院に入院の上で化学療法の予定としていたが,手術から36日目に発熱を来した.CT検査で,右水腎症,右Urinomaを疑う所見を認めた.遅発性の尿管損傷の診断で経尿道的にステント挿入を試みたが,尿管の損傷部を通過できなかったため腎瘻造設を行った.腎瘻造設後の尿管の造影でも損傷部の狭窄は強くステントの挿入は困難であった.なお結腸右半切除の術中に明らかな尿管損傷を疑う所見はなかった.病理学的にも腫瘍による尿管浸潤は認めなかった.
 大腸癌の手術において中枢郭清が重要である.結腸右半切除術において術中に留意すべき点の一つとして授動の際の右尿管損傷があり,術後のUrinomaや水腎症には注意しなければならない.本症例のように術後1か月以上経過してから発熱などの症状を来す場合もあり,周術期のみならず遅発性の尿管損傷も留意する必要がある.今回我々は術後遅発性に診断された尿管損傷を経験したので報告する.