講演情報

[VWS3-7]臓器脱特有の解剖学的特徴を理解したLSC+LVR~視野確保とメッシュ固定の工夫~

大橋 勝久1, 大橋 勝英1, 佐々木 章公2, 太田 和美2, 北川 一智2, 森谷 行利3, 玉木 孝彦3, 前田 雅彦4, 香山 浩司4 (1.大橋胃腸肛門科外科医院, 2.十全総合病院, 3.森谷外科医院, 4.前田病院)
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【はじめに】臓器脱患者の解剖学的構造は独特で,直腸癌手術のそれと異なり,理解が不足すると手術のクオリティが低下する.特に女性前方臓器脱(いわゆるPOP)と直腸脱が併存する複雑な症例では,根治性,安全性,術後排泄機能にも悪影響を及ぼしかねない.複雑な臓器脱に対して当院で行っている工夫と手術成績について検討した.
【手術アプローチ】①座位怒責診と会陰エコー,多臓器排便造影検査で脆弱部を評価する.②脆弱部位に応じて修復法を選択する.膣前後壁の脆弱性をもつ直腸脱や直腸瘤,直腸重積にLSC(膣前壁メッシュ+後壁補強)+LVR(直腸前壁メッシュ)を適応とする.③亀背例は,骨盤が高位となるよう臀部にソフトクッションを挿入する.④S状結腸の骨盤内への垂れ込みを予防する目的で,S状結腸をオーガンリトラクターで挙上する.⑤直腸-膣/膀胱-膣間の剥離やメッシュ固定操作時はオクトパスリトラクター(ユフ精器)による膣展開を行う.⑤剥離のゴールラインを明確に定める ⑥膣後壁は非吸収有棘糸で補強しメッシュを省略する.⑦メッシュと直腸前壁/膣前壁は浅い運針でメッシュが十分展開するように幅広く多く行うが,最近は3-0有棘針で縦3列連続縫合固定している.⑧ダグラス窩腹膜を高位閉鎖する.
【成績】平成29年よりLSC+LVRを導入し22症例に施行(11例に付属器子宮亜全摘併用)した.開腹移行はなく,2例に抗生剤治療を要する創感染と,1例に治療を要する腹壁瘢痕ヘルニアをみとめた.小児頭大の巨大なPOP1例は,様々な解剖学的な理由からLSC+LVR施行困難だったが,他定型手術が可能だった21例に再発を認めていない.
【考察】他院手術失敗例に対するサルベージ症例の初回ビデオを確認すると,不十分な術野展開と誤った修復コンセプトに起因していることが多い.入念な術前シミュレーションと臓器脱特有の術野展開を行うことで,安全確実な手術が可能となる.また最近行っている有棘針連続縦縫合によるメッシュ固定は,縫合固定操作が用意で術者のストレス低減にもつながる.
【結語】POPを有する直腸脱は,正確な診断と適切な手術手技をもちいることで,安全に修復することが可能である.