講演情報
[VWS1-7]全周性の高度痔核に対するMuRAL変法の手技と成績
小野 朋二郎, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 相馬 大人, 安田 潤, 齋藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (大阪中央病院外科)
背景:全周性に大きく腫脹する痔核が脱肛する症例,特に痔核同士の境界がなく畝のように連なって脱肛する痔核は切除のデザインに苦慮するのみならず,術後に出血や狭窄といった合併症のリスクが高くなることが懸念される.Mucopexy Recto-Anal Lifting(以下MuRAL)法は痔核に対する低侵襲手術としてPaganoらが2018年に報告した術式であり,痔核から口側の直腸粘膜まで縦に縫縮して吊り上げ固定を行うことで脱肛を改善する手技である.痔核同士の境界が不明瞭なものや,肛門管が深く痔核を引き出すことが困難な症例は結紮切除の手技に難渋することが懸念されるが,我々はこのような症例に対してMuRAL法に若干の修正を加えた手技を適応することで比較的良好な成績を得たので報告する.
術式:脊椎麻酔下,Jackknife体位で手術を施行する.原法ではHemor-Pex System(以下HPS)という特殊な肛門鏡を用いて歯状線より口側の痔核部分にZ縫合をかけ,そこから縦に螺旋状の運針を肛門管口側縁の直腸粘膜部分まで行って両端の糸を縫合することで縦に縫縮を行い,痔核を吊り上げ固定している.しかしながら本邦では現在このHPSは入手が困難であり,我々は処置用肛門鏡(鳥越タイプ)を用いている.腫脹している痔核の肛門管外側縁レベルで1‐0吸収糸でZ縫合をかけ,そこから長軸方向へ螺旋状に運針する.痔核上極を越えて直腸粘膜に運針を進めるが,肛門管上縁にはこだわらず,直腸粘膜の弛みが解消される部位まで運針する.最後に運針した口側の糸と先のZ縫合の糸を結紮することで痔核全体が口側に吊り上げられる.以上の手技を痔核の状態に応じて数か所で行うことで全周性の脱肛を肛門内に還納する.
成績:2022年1月から2023年3月までの間に全周性に痔核が脱肛する症例に対して上記の手技で手術を施行した症例は39例であった.脱肛症状は38例(97.4%)で改善したが,そのうち1例は肛門皮垂の腫脹が残り,再切除行った.Clavien-Dindo分類でGrade 2以上の合併症は排便障害で新規に便通調整薬を処方したものが2例,排尿障害が3例,創治癒遷延が1例に認められたが,いずれも保存的加療で軽快した.
術式:脊椎麻酔下,Jackknife体位で手術を施行する.原法ではHemor-Pex System(以下HPS)という特殊な肛門鏡を用いて歯状線より口側の痔核部分にZ縫合をかけ,そこから縦に螺旋状の運針を肛門管口側縁の直腸粘膜部分まで行って両端の糸を縫合することで縦に縫縮を行い,痔核を吊り上げ固定している.しかしながら本邦では現在このHPSは入手が困難であり,我々は処置用肛門鏡(鳥越タイプ)を用いている.腫脹している痔核の肛門管外側縁レベルで1‐0吸収糸でZ縫合をかけ,そこから長軸方向へ螺旋状に運針する.痔核上極を越えて直腸粘膜に運針を進めるが,肛門管上縁にはこだわらず,直腸粘膜の弛みが解消される部位まで運針する.最後に運針した口側の糸と先のZ縫合の糸を結紮することで痔核全体が口側に吊り上げられる.以上の手技を痔核の状態に応じて数か所で行うことで全周性の脱肛を肛門内に還納する.
成績:2022年1月から2023年3月までの間に全周性に痔核が脱肛する症例に対して上記の手技で手術を施行した症例は39例であった.脱肛症状は38例(97.4%)で改善したが,そのうち1例は肛門皮垂の腫脹が残り,再切除行った.Clavien-Dindo分類でGrade 2以上の合併症は排便障害で新規に便通調整薬を処方したものが2例,排尿障害が3例,創治癒遷延が1例に認められたが,いずれも保存的加療で軽快した.